大手銀行などが10月1日から“17年ぶり”に住宅ローンの変動金利を引き上げました。さらに、今後も金利上昇が見込まれる中、私たちの生活にどんな影響が出るのでしょうか。そして、番組の取材で見えてきた、他人事ではない「住宅ローン破綻」の実態とは?(10月5日OAサタデーステーション)
■年利0.15%↑で返済「毎月5000円増」の男性
番組が訪ねたのは、東京都中野区にあるマンション。
去年マンションを購入 小山さん(仮名・34・会社員)
「景色が一番気に入っています。天気のいい日は富士山も見えます」
55平米の2LDK、築15年の中古物件を去年12月に6850万円で購入。購入時に35年ローンを組みました。
小山さん(34)
「上がらないだろうと思っていたので、変動金利で最初は0.62%ですね」
「大丈夫だろうと思っていたら、まさか本当に来た。0.15%上がって、金額で言うと毎月5000円ぐらい上がると思います」
日銀が「マイナス金利政策」を解除し、7月に利上げを行ったことに伴い、10月から大手銀行などで軒並み引き上げられた変動型住宅ローンの基準金利。引き上げ幅は年利0.15%で、メガバンクが基準金利を引き上げるのは17年ぶりです。
小山さん(34)
「物価とかも全部上がっているし、この上で更に金利かと思うと、ちょっと頑張って節約するか仕事を頑張って昇進するかみたいな感じですかね」
■「固定で50年ローン」メリットは?
これから住宅の購入を考えている人は、金利の上昇にどう対応すればいいのでしょうか。結婚を機にマイホーム購入しようとローンの相談に訪れた廣田さん。
マイホーム購入を検討中 廣田智生さん(27・会社員)
「固定金利を勧められて、そちらに決めました。金利が上がろうが何しようが安心して支払うことが出来る」
現在、変動型より金利が高いものの、今後の利上げの影響を受けない「固定型金利」を選びたいといいます。その上で、検討しているのが…
廣田さん(27)
「今回は50年ローンという、長期ローンを組みます」
返済期間が最大50年の「超長期ローン」。廣田さんがメリットとして感じているのが、月々の出費を抑えられることや借入金額を増やせることに加え、契約者に万が一のことがあったときに住宅ローン残高がゼロになる「団体信用生命保険」を受けられる期間が長くなることです。
こうした超長期ローンの需要は高まっているといいます。
筑波銀行すまいるプラザ研究学園 小貫清孝センター長
「超長期ローンの現在の利用率は全体の3割程度。金利上昇および住宅価格の上昇に伴って、月々の支払いを抑えたい。若い世代の方が家を持ちたいという理想のお手伝いができると考えています」
■「超長期ローン」金利負担増に注意
しかし注意が必要なのは、返済期間が長い分、金利負担が大きくなること。
変動型を選ぶ場合、その不安も大きくなります。
今年マイホームを購入 荒井佑太さん(25・会社員)
「今、家族3人いるんですけど、広くゆっくりできるスペースを意識して間取りとかも考えました」
「庭を子どもが遊べるように芝にしてみたり。ちょっと自分で色々とやってみたいなという思いと、お金をそんなにかけられないなって」
子どもが生まれたことをきっかけに、今年、45年の変動型で約3000万円ローンを組んだ荒井さん。ローンの借入金額を抑えるために庭は自分で完成させることにしました。子どもの教育費を見込んで手元にお金を残そうと45年ローンを選んだといいますが…
荒井さん(25)
「今から70歳くらいまで返済しなきゃいけないので、そこはちょっと不安ですね」
今後も金利が上がっていく可能性がある中、対応策として考えているのが、「繰り上げ返済」。
妻・荒井陽香さん(30)
「これから多分、どんどん子供も増えたりしてお金がかかってくると思うので、『繰り上げ返済』ができればどんどんしていきたい」
■“住宅ローン破綻”増える相談
金利上昇の他にも今、問題となっているのが収入の減少などでローンが支払えなくなる「住宅ローン破綻」です。
任意売却119番 代表・富永順三さん
「昨今は高齢の方、特に年金世代の方とかですね。そういう方々の相談が徐々に増えつつありますね」
同行取材したのは、住宅ローンコンサルタントの冨永さん。
富永さんの会社には月に200〜300件ほどローン破綻の相談があり、約3割はシニア世代からの相談だといいます。
千葉県に住む佐藤さん(77)は27年前、1800万円かけて家を建て直した際に30年のローンを組み、毎月9万円を返済してきました。
兄弟の経営する工場で働いていましたが、膝の病気で仕事を辞め、妻も病気で介護が必要な生活に。
現在、毎月9万円の返済額に対し、入ってくるお金は年金などあわせて10万円。残りのローンは300万円程度ですが、返済が困難となり、相談することにしました。
病気もある佐藤さん夫婦の思いは「何とかこの家に住み続けたい」ということ。
そこで今回、富永さんが提案したのが「リースバック」という方法です。リースバックとは、自宅を売却して現金化した上で、毎月家賃を支払うことで、売却した自宅に賃貸の形で住み続けられる仕組みです。
佐藤さん(仮名・77)
「妻が病気をもっていますからね。あっち行ったりこっち行ったりできないので、ここに住まわせてもらって。これまでそんなに苦労はしなかったんですけど、今になってツケが回ってきちゃいましたね。こんなことになるとは思わなかったです」
■変動金利は今後どうなる?
板倉朋希アナウンサー
住宅ローンアドバイザーの淡河範明さんによると、金利は物価に大きく影響され、物価上昇は今後も避けらず、金利も上がっていくとみています。淡河さんの予測では、現在の変動金利0.65%から、1年後には1.65%、2年後には2.65%くらいまで上がる可能性があるということです。もちろん、専門家の中には、それほど急激には上がらないという見方をしている人もいますが、淡河さんは、最悪、これくらいまで上がることも視野に入れておくほうがいいとおっしゃっています。
高島彩キャスター
あくまでも淡河さんの予想ということですけれども、実際の返済金額にするとどのくらの違いが出てくるんでしょうか?
板倉朋希アナウンサー
例えば、3000万円を35年ローンで借り入れた場合、変動金利0.65%でみると月7万9880円の返済額ですが、これが1%上がると1万3800円増え、2%上がると2万8500円ほど負担が増えるということです。一方でフラット35の固定金利のほうも、現在1.82%ですけれども、1年後には2%を超え、2年後には3%を超える可能性があるということです。
高島彩キャスター
変動も固定も上昇傾向にあるようですが、どちらを選ぶか悩みますよね。
板倉朋希アナウンサー
淡河さんによりますと、金利は経済状況で変わるので正確に予測するのは難しいが、将来的には更に上がる可能性もあるので、返済計画が見通せる固定金利と変動金利を半々にする『ミックス金利』にしておくのがいいんじゃないかということです。金利が下がれば返済額は減りますし、たとえ金利が上がったとしてもリスクを減らしてます、ということでした。
高島彩キャスター
目の前の金利か、将来のリスクに備えるか。判断が難しいですよね?
ジャーナリスト柳澤秀夫氏:
先行きが不透明ですから悩ましいところですが、金利が上がったとしても、賃金が持続的に上がっていけば何とかしのげるかもしれない。ただ一方で、日本だけじゃなくて、来月アメリカで大統領選挙がありますが、アメリカの金融政策がどうなるかにより日本にも影響が出てきますから、日本だけでなくアメリカがどうなるか、ということも我々の身近な金融の問題に大きく影響してくるということは避けられないですよね。
高島彩キャスター
住宅ローンがある世代というのは子育て世代でもあり、お金がたくさん出ていく中で子育て支援というのもやはり力を入れてほしいと改めて思いますね。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。