アリババは聖域なき事業再編を進めて成長の再加速を目指すが、目に見える成果を示せていない(写真は同社ウェブサイトより)

中国のEC(電子商取引)最大手の阿里巴巴集団(アリババ)が、主要事業の6分割を柱とする大がかりな構造改革を開始して1年。同社の創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が書きつづった、現経営陣の改革の取り組みを支持するメッセージが注目を集めている。

このメッセージは4月10日午前、アリババのイントラネット上に「風清揚」というペンネームで投稿された。その中で馬氏は、「KPI(業績評価の数値指標)ばかり追求せず、アリババのあるべき姿をしっかり見つめ直して、顧客のために価値を創造する経営路線に立ち戻った」と述べ、過去1年間の取り組みを前向きに総括した。

馬氏はさらに、経営体制の刷新により董事局主席(会長に相当)に就任した蔡崇信(ジョセフ・ツァイ)氏と、CEO(最高経営責任者)に就任した呉泳銘(エディー・ウー)氏の手腕を賞賛。「今後はさらに積極的、能動的かつスピーディに自己変革を進め、改革にもっと大きな力を注がなければならない」と述べ、改革の継続と加速を促した。

創業メンバー2人がトップに

アリババは2023年3月28日、主要事業を6つのグループと複数の単独企業に分割する組織再編を発表。それぞれに高い経営の独立性を与え、独自の資金調達や上場も認めることで、グループ全体の成長の再加速を目指してきた。

2023年9月には経営トップの交代も敢行。董事会主席兼CEOだった張勇氏が退任し、アリババの創業メンバーの1人で馬氏の信認が厚い蔡氏が董事会主席に、同じく創業メンバーの1人の呉氏がCEOにそれぞれ就任した。

呉氏はCEO就任の2日後、全社員に宛ててメールを送信。「アリババはチームの若返りを進める。『85后(1985年以降生まれ)』や『90后(1990年以降生まれ)』を管理職の主力に抜擢し、業務レベルのマネジメントを刷新する」と宣言した。

さらに2023年11月、呉氏は各事業の優先度の再評価に着手し、「非中核事業に関しては早急に黒字化を図るか、さまざな資本調達手段を用いることで(潜在的な)事業価値を具現化する」と表明。事業売却を含む聖域なき改革の実行を打ち出した。

馬雲氏は表舞台から身を引いた今も、アリババの経営に大きな影響力を維持している(写真は同社ウェブサイトより)

だが、一連の思い切った改革にもかかわらず、アリババは資本市場の評価を獲得できていない。アメリカのニューヨーク証券取引所に上場するアリババのADR(アメリカ預託証券)は2024年1月、同社が2014年9月にIPO(新規株式公開)を実施した当時の売り出し価格である68ドル(約1万322円)を一時的に割り込んだ。

「失敗を犯すのを恐れるな」

創業者の馬氏が、前述のメッセージをこのタイミングで社内に発信したのは、改革の短期的な成果が見えないことに対する社員の動揺を抑え、改革継続に自信を持って取り組むよう促す狙いがありそうだ。

馬氏はメッセージの中で、「アリババはこれまで数え切れない失敗を犯し、今後も失敗を繰り返すだろう」とも述べ、次のように強調した。

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「失敗を犯すのを恐れてはならない。間違わない人間などいないからだ。本当に恐れなければならないのは、間違いに気づかず、間違いを認めず、間違いを改めないことだ」

馬氏はさらに、IT技術は巨大な変革期を迎えており、3年から5年の短期間で天地が覆るほどの変化が起こりうると指摘。「AI(人工知能)の時代はまだ始まったばかりだ。すべての勝負はこれからだ」と、社員を鼓舞した。

(財新記者:包雲紅)
※原文の配信は4月10日

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