(ブルームバーグ):米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、連邦公開市場委員会(FOMC)では「時間とともに」政策金利を引き下げていくと表明した。一方で経済全般については、しっかりとした足取りを続けているとの認識を改めて示した。

パウエル氏はまた、インフレ率がFOMCの2%目標に向かって低下を続けるとの確信を改めて示し、経済では物価上昇圧力が一段と緩和する情勢が「整っている」と述べた。

パウエル議長は30日、ナッシュビルで開かれた全米企業エコノミスト協会(NABE)の年次会合で講演。「この先、経済がおおむね想定通りに進展すれば、政策は時間とともにより中立のスタンスへと移行するだろう」と語った。ただ「われわれはあらかじめ定まった道を進んでいるのではない」とも指摘。政策当局は今後も入手するデータに基づき、会合ごとに判断を下していくと説明した。

中立的な政策とは、景気を刺激も抑制もしない政策。現在の政策金利は今月18日に4.75-5%のレンジに引き下げられたが、依然として経済活動を抑制していると広く認識されている。

FOMC、0.5ポイントの利下げ-積極緩和で経済守る決意表明 (3)

投資家にとっては今後数カ月の利下げ幅とペースが極めて重要な問題だが、今回の発言はそうした疑問に答えを与えなかった。

パウエルFRB議長

講演後の質疑応答でパウエル議長は、9月の利下げ決定と同時に発表された当局者予測が、11月と12月の2会合で0.25ポイントずつの利下げを示唆していることを認めた。しかし、まだ入手していない情報も含めデータに基づいて決定を下すと注意を促した。

さらに「委員会は利下げを急いでいない」と発言。「最終的には、これから入ってくるデータに導かれるだろう。景気が予想以上に減速すれば、利下げを速めることが可能だ。景気が予想ほど減速しなければ、もっとゆっくりしたペースで利下げを実施できる」と語った。

FOMCは18日、政策金利を0.5ポイント引き下げた。これは2020年以来の大幅な利下げで、従来の動きよりも大規模なものだった。減速する労働市場のさらなる悪化を防ぐことが目的だと、FOMCは説明している。

パウエル議長は30日、労働市場は底堅いとしながらも、状況は「この1年で明らかに冷え込んでいる」と述べた。

さらに「2%というインフレ率を達成するために、労働市場の状況がさらに冷え込む必要はないと考えている」と語った。

続くディスインフレ

27日に発表された8月の米個人消費支出(PCE)統計では、価格指数が前月比0.1%上昇。前年同月比では2.2%上昇した。

米PCEコア価格、前月比の伸びが予想下回る-消費支出も低調 (3)

この統計を受けて、インフレ率が目標に向かって低下しているという確信を強めたため、当局は労働市場の強化に一層注力できるようになった。

パウエル議長は「ディスインフレは広範囲に及んでおり、最近のデータは2%への持続的な回帰に向けたさらなる進展を示唆した」と述べた。

一部の政策当局者はなお、利下げが速過ぎてインフレ圧力が再燃する可能性を警戒している。

パウエル議長は「われわれの目標は最初からずっと、痛みを伴う失業率の上昇なしに物価の安定を回復することだ。そうした痛みは高インフレを抑える取り組みに伴うことが多い」と話した。「この任務は完了したわけではないが、その成果に向けてかなりの前進を遂げた」と続けた。

今後の見通し

議長は住宅関連インフレの低下が緩慢であることを認めつつも、やがてさらに低下していくことに自信を示した。

18日に示した当局者の予測では、中央値で年内に0.5ポイント、2025年にさらに1ポイントの追加緩和を見込んでいる。しかし、幾人かの当局者は年内の緩和幅をより小さく見積もっている。

金利先物市場では、約75ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の年内利下げが織り込まれており、これは11月か12月にもう一度大幅な利下げが実施されることを示唆している。

一部の当局者は、労働市場に深刻な軟化の兆候が見られれば、再度大幅な利下げが正当化される可能性があるとして、そのような動きの余地を残している。一方、ボウマンFRB理事は18日に0.5ポイント利下げに反対し、0.25ポイントの利下げを主張した。24日の講演では、インフレリスクが長引くとの見方を強調。FOMCは「慎重な」ペースで金利を引き下げるべきだと述べた。

ボウマン理事、インフレリスクは残っている-FRBは物価注視を (1)

原題:Powell Says Fed Not in a Hurry, Will Lower Rates ‘Over Time’(抜粋)

(議長の質疑応答などを追加し、更新します)

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