(ブルームバーグ):24日の日本市場では債券相場が大幅高となり、長期金利は1カ月超ぶりの水準に低下した。日本銀行の植田和男総裁が20日の金融政策決定会合後の会見に続き、この日の講演でも追加利上げを急がない姿勢を示し、買いが優勢となった。
円相場は対ドルで144円台前半と円安方向に振れ、テクノロジーや海外景気敏感業種を中心に企業業績への楽観的な見方が広がった株式相場は4営業日続伸。
日銀の植田総裁は24日、大阪経済4団体共催懇談会で講演し、政策判断に当たっては「時間的な余裕はある」との認識を改めて示した。政策金利の現状維持を決めた20日の会合後の記者会見でも、日銀の経済・物価見通しが実現していけば利上げを続けていく方針を繰り返す一方、最近の円安修正に伴う物価上振れリスクの減少で、政策判断を巡る時間的余裕に言及していた。
物価上振れリスク減少、政策判断に時間的な余裕ある-植田日銀総裁
債券
債券相場は大幅高。日銀による早期の追加利上げ観測が薄れ、長期金利は1カ月超ぶりの水準に低下した。
SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、植田総裁の発言が9月会合の会見から変わるのではないかとの見方から、発言前に債券先物はやや上げ幅を縮めたものの、「内容はほとんど変わらなかったことで買い戻されている」と述べた。
財務省が24日に実施した残存期間1年超5年以下の流動性供給入札の結果が堅調だったことも相場のプラス要因。応札倍率は3.81倍と、7月22日の同年限の前回入札3.26倍を上回った。
日本債券:流動性供給の過去の入札結果(表)
岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは10月のサービス価格改定や来年の春闘に関する情報を十分に得られる前に日銀が利上げに動く可能性は低いと予想。10月に動くのは「円安が急速に進み、日銀に待つ余裕がなくなった場合に限られそうだ」とみる。
新発国債利回り(午後3時時点)
外国為替
東京外国為替市場の円相場は対ドルで144円台前半に下落。日銀の植田総裁がこの日の講演で、円安修正で輸入物価上昇を受けた物価上振れリスクが減少する中、政策判断に時間的な余裕があると改めて発言し、円売りの動きが強まった。
りそなホールディングス市場企画部の井口慶一シニアストラテジストは「エコノミストが年末年始の利上げを見込む一方、金利スワップ市場ではほとんど織り込まれていないことから、円は売られやすくなっている」と言う。
また、午前には中国が主要短期金利や銀行の預金準備率の引き下げなど広範な景気刺激策を発表し、投資家心理が改善した。27日投開票の自民党総裁選を巡り、高市早苗経済安全保障担当相が選出された場合に緩和姿勢を続けるとの見方が出ている点も円売り材料と受け止められた。
中国人民銀、広範な景気刺激策発表-年間成長目標の達成目指す
金融市場は自民総裁選を注視、金融政策に影響の見方広がれば変動も
株式
東京株式相場は4日続伸。日銀総裁が決定会合後の会見で利上げを急がない方針を示したことを受けて為替相場が円安方向に振れたほか、前日の米国株高を受け投資家心理が改善した。
電機や機械、精密機器などテクノロジー関連、海運や非鉄金属など海外景気敏感セクターが買われ、大雨災害の復旧需要の拡大観測から建設株も高い。ただし、朝方の買い一巡後は伸び悩み。陸運やサービス、小売株など内需セクターの一角が安く、国内金利の低下を材料に銀行株、乳がん治療薬候補の治験で有意差が確認できなかった第一三共を中心に医薬品株も軟調だった。
東海東京インテリジェンス・ラボの平川昇二チーフグローバルストラテジストは、この2カ月半ほど日本の利上げ観測や米国の景気減速懸念からディフェンシブが買われ、ハイテク株などが売られたが、米連邦準備制度理事会(FRB)の大幅利下げと日銀のコメントで「どうも色合いが変わった」と指摘。景気は後退しないとのストーリーでこれまでの「逆が起きている」との見方を示した。
東証33業種中、26業種が上げ、7業種が下落。TOPIXを構成する2129銘柄のうち、上昇は1049、下落は971だった。プライム市場の売買代金は4兆3015億円と前営業日と比べ27%減った。
--取材協力:長谷川敏郎、岩井春翔.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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