(ブルームバーグ):日本銀行の植田和男総裁は24日、円安修正を背景に、金融政策の判断にあたっては「時間的な余裕はある」との見解を改めて示した。大阪経済4団体共催の懇談会で講演した。

植田総裁は円安が修正されてきており、「輸入物価上昇を受けた物価上振れリスクは相応に減少している」と指摘。その上で、政策判断をする際に、「内外の金融資本市場の動向やその背後にある海外経済の状況などについて、丁寧に確認していく必要があるし、そうした時間的な余裕はある」と述べた。

植田和男日銀総裁(9月20日)

植田総裁の発言を受け、円相場は対ドルで144円台前半に下落した。

植田総裁は米国経済について「依然不確実だ」とし、これまでの利上げの労働市場への影響や、労働需給の緩和による個人消費の先行きもみていく必要があるとした。その上で、米国経済や内外の金融資本市場の動向が経済・物価に及ぼす影響についても注視する考えを示した。

一方で、先行き、基調的な物価上昇率が見通しに沿って高まっていくならば、「政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適当」との考えを重ねて強調した。

また、「将来、基調的な物価上昇率が2%前後となる局面では、政策金利を経済・物価に対して中立的な水準に近づけることが望ましい」と発言。「今後、展望リポートで示している経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて、政策金利を引き上げていくことになる」と語った。

植田総裁は適切な金融政策による物価安定の実現は経済の持続的な成長の基礎になるとも強調。企業への大規模アンケートでは賃金と物価が「ともに緩やかに上がる」状態が望ましいとの回答が多かったとし、「デフレへの逆戻りは避けなければならない」と考えを明確にした。

他の発言

  • 持続的賃上げとその価格転嫁が幅広く実現するか注視する
  • 物価の基調、2%に向けて徐々に高まっている
  • 経済・物価巡る不確実性大きく、予期せぬ事態もしばしば生じる
  • 金融政策変更の経済・物価への影響、しっかり見極め
  • 賃金しっかりした上昇するか、今後の経済の重要なポイント

20日の金融政策決定会合では、政策金利0.25%程度の据え置きを決めた。植田総裁は記者会見で、日銀の経済・物価見通しが実現していけば利上げを続けていく方針を表明した一方で、金融市場や米経済の不透明感の強まりに警戒感を示した。同日も政策判断に「時間的な余裕はある」と発言したことで、市場では早期の追加利上げ観測が後退している。

日銀は今年3月の17年ぶりの利上げに続き、7月会合では経済・物価が見通しにおおむね沿って推移しているとして追加利上げに踏み切った。その後の8月初旬の金融市場は、米経済の後退懸念も重なって日経平均株価が歴史的な急落するなど乱高下。日銀の政策運営に関するコミュニケーションの在り方も課題となっている。

(植田総裁の講演内容を追加して更新します)

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