能登半島地震を受けて運休していたのと鉄道が4月6日に全線での運転を再開した。運転再開した駅の中には、桜のトンネルで有名な能登さくら駅「能登鹿島駅」がある。しかし桜だけでなく、足下にも注目すると、花壇には、色とりどりの花がきれいに咲いている。元日の地震発生からのと鉄道が全線で再開するまでの約3カ月間、この駅で再び人々を迎える準備を進めてきた女性がいる。のと鉄道の再開を待ちわびた女性の思いを取材した。
能登さくら駅復活を祈る”桜娘ズ。”
4月6日、のと鉄道が全線での運転を再開した日。この日を待ちわびていた女性がいる。佐藤まゆみさんだ。
この記事の画像(24枚)「能登さくら駅」の愛称で親しまれている穴水町の、「のと鉄道・能登鹿島駅」佐藤さんはここである活動を続けている。
佐藤さん:
花壇に花を植えているんです。
観光客:
ご苦労様です、きれいやね
桜の下で咲く色とりどりの花。佐藤さんは2014年、地元の女性たちで駅に花壇を整備する「桜娘ズ。」を結成。桜の時期が終わっても一年中、楽しめる駅にしようと活動を続けてきた。
佐藤さん:
花というのは人と人をつなぐ役目があるんじゃないかなって、わかりました。桜が散ると寂しい駅になっていたので今現在やっと一年中花が咲く花壇になりました。
年中花が咲く駅になった所…能登半島地震が発生
ところが活動10年目に入った今年、1月1日、能登半島地震が発生。のと鉄道は甚大な被害を受け、全線で運休を余儀なくされた。
こうした中、地震から1カ月あまりが過ぎた今年2月。
佐藤さん:
久しぶりー!なんかすごいかたちになっちゃって…1日はここにいたりして、この辺の状態もみたんですけどそのあとは怖くて近寄れなかった。
佐藤さんは自宅で被災し、元日は能登鹿島駅で車中泊をして過ごしたと言う。駅に来るのはあの日以来だ。
佐藤さん:
ここも今にも崩れそう、けっこう折れたりしているのがあったりするんですよ。
地震で一部の桜の木が折れ、駅舎は応急危険度判定で「危険」と判定された。線路もゆがみ、列車は地震発生以降走っていない。
そして、佐藤さんがわが子のように大切に育ててきた花壇も…
佐藤さん:
あーあそこに飛んどるわ…
花壇に飾ってあったものは、地震で遠くに飛ばされていた。
佐藤さん:
みんなで木を切って絵をかいて、けっこう苦労したんです。飾ったところだったんです。春にはみんな、きっとびっくりするよねと話していたんですけど…
”桜娘ズ。”のメンバーたちも、金沢に避難するなどバラバラになってしまった。花をきっかけに一日中訪れた人と話しこみ、列車が通るたび見えなくなるまで手を振り続けていた佐藤さん。
地震で列車も、人も、姿を消してしまった。
佐藤さん:
列車が止まると聞いたときショックで…みなさんに手をふれないのがドーンと来てしまった。それが寂しい、早く皆さんにお会いしてお話しできたらなって。
2007年の地震の時は咲かなかった”桜”
さらに、こんな心配事もあると言う
佐藤さん:
前の2007年の能登半島地震の時にね、桜が全く咲かなかったんですよ。桜って悲しんでいるんだねと、地元では感じていました。だから今年はなんとか頑張ってほしいなと思って蕾を待ち望んでいるんですけど。
3月。
佐藤さん:
このへんにお花がとにかく売ってないんですよ。お水がないからお花を扱えないということで、七尾のほうまで買いに行ってそろえてきたんです。きょうは絶対チャンスだなと思って
この日、佐藤さんは花を持って能登鹿島駅へ向かった。
佐藤さん:
これがラナンキュラスで、これリベリアですし、パンジーとかビオラとか…
佐藤さん:
いい加減花を植えないといけないので。
作業員:
全然問題ないですよ、うちもホームは(作業が)終わったので。もう少しで桜も咲きますしね。佐藤さん:
どうなんだろうね、桜と花が合体してくれたらいいよね。
作業員:
4月6日に全線開業ですから
佐藤さん:
それまでにね。ちらほらでもいいから…
地震発生から約3カ月後の4月6日に穴水駅までの全線でのと鉄道の運転再開が決まったのだ。
佐藤さん:
きのうもなんか眠れなくて、明日植えれる、晴れるわ。きっとみんな来てくれて植えれるわと想像すると、毎回お花を植える前の日は眠れないんです。
運行再開決まり”桜娘ズ。”が再結集
桜娘ズ。が集合し、花を植えて列車を迎える準備をする。
佐藤さん:
どんなもん?ここチューリップ植えたんだけど。出てるよ、チューリップ出てる。
桜娘ズ。のメンバー:
スイセン終わっちゃうからここらへんにもお花ほしい。
佐藤さん:
サクラソウ置いとくよ。
久々の活動にメンバーの会話も弾む。
桜娘ズ。のメンバー:
みんないいよね、花を触るとね
桜娘ズ。のメンバー:
(地震のことを)忘れるわ。ちょっとの間だけでも、ほっと忘れて。きれいに咲いてくれればいいなと思って一生懸命…はっはっはっは。
地震後初めてのお茶会は、いつもの場所で…
佐藤さん:
見違えました、良かったー。この日を待ってた、やっぱり違いますよ。心ときめきますよね、お花はね。みんなの力を借りないと、たどり着かないので…1人では。あとは電車に手を振りたい、それを願ってみなさん頑張ってもらっています。
のと鉄道全線再開…佐藤さん大役が
そして、4月6日。
佐藤さん:
意外と似合うのよ。
記者:
なんていうんですか?
佐藤さん:
出発進行だって。GOだと思ってた。ありがたいことだけど緊張するよね~。
なんと佐藤さん、全線復旧に合わせ一日駅長をまかされたのだ。
佐藤さん:
みなさん頑張っていただいて…
のと鉄道の人:
嬉しいです。
佐藤さん:
この日に間に合わせるのもすごいです。
午前6時12分
佐藤さん:
出発進行!
1番列車は警笛を鳴らし、少しずつ進んでいった。
運転再開を待つかのように待望の桜が開花
佐藤さん:
このあたたかさならお昼くらいからどんどん咲いてくると思うわ。ほら、咲きたくて仕方がない、ぽろぽろぽろぽろ、見てても分かるくらい咲いてくるよ。
2007年の地震の時には咲かなかったと言う桜が咲いたのだ。さらに、地震後、佐藤さんのもとにはこれまで駅で知り合った人などから、応援のメッセージとともに花の苗や種が届いていた。
また、地元の人から断水で栽培できなくなった花やハーブを譲り受け、駅を訪れた人に配ることにした。
佐藤さん:
これはかわいい花が咲くんですよ。シバザクラと見違えるほど
訪れた人:
へ~!
花をきっかけに会話がはずむあのころの光景が戻ってきた。
花を受け取った人は:
いつものさくら駅でよかったです。みんなまたここに訪れてくれたら、能登も元気になりますね。
佐藤さん:
お花を植えてもらって、能登半島を全部お花でいずれお迎えできればいいなと。能登のやさしさを伝えていけたらいいなと思っています。
桜娘ズ。が届けたい思いがホームにあった。『ありがとう頑張ります』
佐藤さん:
『ありがとう』という言葉を伝えたいんですよ。だからあそこに並べたんですけど。
電車の音:
カンカンカンカン
佐藤さん:
きたきた…なつかしの…
列車に向かって手を振る佐藤さん。この光景も戻ってきた。
佐藤さん:
これからですね、始まりましたね。
(石川テレビ)
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