特集は世界最高峰のファッションショーに参加する信州人です。長野市でヘアサロンを経営する男性が、9月、「パリコレ」にヘアスタイリストとして参加します。意気込みと練習の様子を取材しました。

■パリコレへ「ワクワク、ドキドキ」

長野市稲里のヘアサロン「APRIRE(アプリーレ)」。代表は理容師・美容師歴合わせて約40年の三水芳信さんです。

9月、三水さんは「憧れの地」へ向かいます。


客:
「いよいよ、いつから行くんですか?」

アプリーレ・三水芳信さん:
「20日から行くんですよ」

客:
「どうなんですかね、オリンピック終わって」

三水芳信さん:
「すごい盛り上がってると思います」

三水さんは9月23日に開幕するファッションの祭典「パリ・コレクション」にヘアスタイリストとして参加します。県内では2人目ということです。

三水芳信さん:
「ワクワク、ドキドキ、早く行きたい、それしかないですね。誰もが登れる山じゃない、最高の舞台だと思います」


■理容師としてスタート 

三水さんは長野県小川村出身。両親は理容店を営んでいました。

アプリーレ・三水芳信さん:
「おやじ、おふくろがお客さんと他愛もないことでいろいろ話しながら、いい雰囲気の中で髪の毛が仕上がって、最後、必ず笑顔で帰ってくれるのを見た時に『あー、いい仕事してるんだな』『僕もやりたいな』と、床屋さんをやろうと」


高校卒業後、理美容の専門学校で学び松本で理容師として働き出した三水さん。

23歳のころ、セミナーで見た「ある映像」に衝撃を受けます。


アプリーレ・三水芳信さん:
「(髪を)一つにグーっとまとめて、ピタッとしてあって、ゴムで止めてあったけど、(ヘアスタイリストが)出てきてハサミでスパンと切った。ストンと落ちた時にレイヤースタイルになってササっていじったら、めっちゃ格好良くて。自分にないものを持ってて、すごいなと思ったのがきっかけ」

三水さんが見たのは「パリコレ」で活躍するヘアスタイリストの映像でした。


■“学び直し”美容師に

一念発起し美容師になるため再び専門学校へ。両親も後押ししてくれました。

三水芳信さん:
「僕は申し訳ない気持ちでいっぱいだった。跡を継がなきゃいけないし、そうじゃないと床屋さんが絶えてしまう。そしたら、おやじもおふくろも『自分が思うようにやってみろ』と」


美容師として腕を磨き1997年、長野駅前に自分の店を持ちます。

三水芳信さん:
「やれるだけのことをやりたいとがむしゃらにやった時期。お客さまが来てサッとスタイルができちゃう。評判を得て、予約がとれないくらいの状態に」

駅前の店はすぐに手狭となり2002年、現在の場所に店を構えました。


■世界4大コレクションに憧れて

店の経営を安定させる中、三水さんは夢への挑戦を始めます。

アプリーレ・三水芳信さん:
「世界4大コレクションに憧れて、美容師になって、(知人が)コレクションの裏方の仕事っていうセミナーのパンフレットを持ってきてくれて、それ見たときに『俺が目指してるのがこれだ。え、そんなの見れるの』って思って」

憧れのパリコレを目指し2018年、経験者のセミナーを受講。海外のコレクションでヘアメイクを手掛ける会社の「プロジェクト」の選考試験を受け、みごと合格します。

2019年2月、パリやミラノと並ぶニューヨークのコレクションでヘアメイクを担当する日本チームの一員に。

三水芳信さん:
「不安と期待とすごいいろんな思いが最初の時、ありました」


初めてスタインリングをした思い出の写真。

アプリーレ・三水芳信さん:
「このスタイルを作ってランウェイを歩いたのを見た時に鳥肌が立ちました。世界の人たちが自分の作ったスタイルを見てくれてることと、何とも言えない感謝の気持ちと、これからもっといいものを作っていきたいなという気持ちになった」


■長野でも夢をつかめる 

ニューヨークコレクションにはその後、2回参加しましたが、2020年以降はコロナ禍で海外のコレクションへの参加自体が見送られます。

その間、三水さんはー

アプリーレ・三水芳信さん:
「自分の中で間があいたからこそ、練習と気持ちと、メンタル的な面を強くできてるからこそ行きたいという気持ちになった」

このほど、ようやくパリの2025年春夏コレクションで募集がかかり、これまでの実績から三水さんの参加が決定したのです。

三水芳信さん:
「もうやるしかないです。自分自身への挑戦でもあるけど、長野でもこうやって頑張ってやってるのを若い美容師さんたちに見てもらいたいし、自分の夢をつかむきっかけになったらいいなと」


パリコレ挑戦に常連客やスタッフはー

常連客:
「いつかはとは思ってた。でも現実になると、すごいなと思った」

スタッフ・宮尾菜美子さん:
「有言実行、言ったことをかなえるのはすごい」

スタッフ・小山美佳子さん:
「(三水さんは)夢をずっと追いかけるというか、終わりがない感じ、いつも楽しいことを考えてる」


■2カ月程前から猛練習

営業終了後はモデルに協力してもらいスタイリングの自主練習。2カ月程前から毎日3時間から5時間、テーマを決めて行っています。

アプリーレ・三水芳信さん:
「どんなモデルさんが来てもスタイル対応できるように、常にいろんなスタイルをイメージしながら作ってます」

この日はオリジナルの「ブレイド」という編み込みのスタイル。元気はつらつな女の子をイメージして作っていきます。


アプリーレ・三水芳信さん:
「産毛を)チョロンとたらすとかわいい」

前髪にもかわいさをプラス。

30分ほどで完成しました。

三水芳信さん:
「(出来栄えは?)皆さんが見てくれたので最高にいいものができた(笑)。衣装にマッチするために必要なボリュームやツヤ、カールやフォルムを意識している。デザイナーが求めるファッションにいかにいいものを提供できるか、合わせられるか」


■90歳の母は今も現役 

三水さんのパリコレでの活躍を願っている人が小川村にいます。

母のイツヨさんです。御年90歳。

今も現役で、一人で店を切り盛りしています。


母・イツヨさん(90):
「パリへ行くなんてすごいなと思ってるけど、自分の道だから『お前の好きなように頑張っておいで』と。自分のやろうと思ったことをやってもらえれば私は満足です」


■挑戦!理容師歴70年の母を見習い

40年にわたって積み上げてきた技術やセンスの全てを注ぎ込むつもりの三水さん。でもパリコレは通過点。

理容師歴70年の母を見習い、今後も挑戦を続けます。

アプリーレ・三水芳信さん:
「パリコレは僕の中でのスタート地点です、まだ。ミラノコレクションに行きます、ロンドンコレクションに行きます、全部、世界4大コレクションに出て、自分の持ってるクオリティー、技術、どこまでできるか挑戦したい。(母という)目標になるものがそこにありますから、現に尊敬できるし、(自分は)まだ美容師歴40年ですから、あと30年はできるんじゃないかな」

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