(ブルームバーグ):日本銀行が国債の買い入れを減額していく中、国内の投資家が買いを増やす真逆の行動を取り国債利回りの上昇圧力を抑えている。

ブルームバーグが日銀のデータを分析したところ、国内投資家は8月までの12カ月間に国債を差し引き32兆2000億円購入した。一方、日銀は償還額が購入額を上回ったため、小幅ながら売り超過に転じた。

国債に対する民間需要の高まりは、日銀の買い入れ減額が国債の利回り急上昇につながるとの懸念を和らげる。日銀は、国債の購入を減らしながら政策金利を引き上げても、国債相場の暴落を誘発しないという自信を深めるかもしれない。

 

三井住友信託銀行の瀬良礼子マーケット・ストラテジストは「多少金利が上がってきているため、特に長期の投資家にとって国債を買いやすい状況になってきている」と話す。「金利が緩やかに上昇していくという前提の下では、それなりに需要が保たれる状況が続く」とみている。

日銀は7月、2026年3月まで四半期ごとに国債購入額を減らすと発表した。月間の買い入れ額は7月の5兆7000億円から2兆9000億円に減少する見通しだ。

過去12カ月間で国債の最大の買い手は年金の代理と見なされる信託銀行だった。年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は昨年度、国債の保有額を25%増やした。

 

今年に入り国債が1.9%下落したのに対し、株式は配当再投資を考慮すると約11%上昇した。これは、年金基金が各資産への配分をあらかじめ決められた水準に保つため、株式を売却し債券を購入しなければならなかったことを示唆している。

ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストは「信託銀の背後にある年金基金が積極的にポートフォリオのリバランスを行ったことで、信託銀の買いが膨らんで見える」と説明。「日銀の緩やかな国債買い入れ減額の中で、銀行や海外勢が順調に残高を積み増してくるかどうか」が今後の国債需要のポイントだと指摘した。

三菱UFJフィナンシャル・グループで市場事業部門長を務める関浩之専務はインタビューで、10年国債の利回りとオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)の金利水準がそれぞれ1.2%以上になることなどが「本格的な投資を開始する目線だ」と語った。

ティー・ロウ・プライスの債券部門責任者、アリフ・フセイン氏は日本国債について、利回りの上昇に伴い資金が日本に回帰する可能性が高いとの見方から、オーバーウエートの配分を選好している。

三井住友信託の瀬良氏は、日銀は今年度に政策金利を再度引き上げる可能性が高く、10年国債の利回りは1%台に乗せると見込んでいる。

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