(ブルームバーグ):止められないと思われていた米国株の上昇が失速しつつある。これまで最高値更新を続けてきた勢いが、今や多くの難題に直面している。

先月上旬の株安によって、事態がいかに急速に悪化するかが垣間見えた。米国のリセッション(景気後退)懸念を受けた株価急落は、一方向の動きにしか慣れていなかった投資家を動揺させた。その後S&P500種株価指数は反発したものの、ここで重要なのは、下落分を全て取り戻したわけではなかったことだ。

その後、今月6日発表の米雇用統計で雇用者数の伸びが予想を下回ったことを受け、労働市場が冷え込みつつあるとの見方が強まり、株価は下落した。先週にS&P500種は週間ベースで4.25%値下がりし、ナスダック100指数は2022年11月以来の大幅な下げとなった。

米国を巡る懸念は亀裂の一つにすぎない。中国やドイツの成長および、成長低迷による企業利益や株価への影響も懸念されている。以前は不透明だった金利の道筋が明確になり、投資家が約4年ぶりの米利下げまでの日数をカウントダウンする状況にあるにもかかわらず、先行きは一段と不安定なように見える。

さらに、米大統領選、欧州政治の混乱、大型ハイテク株への資金集中などのリスクも、時には揺るぎないと思われていた強気のセンチメントに打撃を与えかねない。

また、バリュエーション(株価評価)高騰も、新たな脆弱(ぜいじゃく)さを生み出している。多くの投資家が上昇を追いかけ、割高な水準で買わざるを得なかったことは、相場が反転し始めたらすぐに売られ、通常の押し目買いが入る前に相場が急激かつ大幅に下落する可能性があることを意味する。

さらに、オプション取引のシフトやシステマチック投資家の勢力は、不規則な動きやリスク回避の雪崩を引き起こすことが可能だ。

ピクテ・アセット・マネジメントのシニアマルチアセットストラテジスト、アルン・サイ氏は「少し前までは、市場は一方向的で、誰もが同じタイプの銘柄に殺到していた」とした上で、「今はもはやそうした状況ではなく、株価がこうした絶え間ない上昇を繰り返す可能性は低い」と指摘した。

新たな目標

8月の相場急落にもかかわらず、S&P500種は年初来で13%、世界株の指標、MSCI・ACWI指数は10%上昇している。

年初の力強いスタートを受け、UBSグループやRBCキャピタル・マーケッツなどのストラテジストらは、数週間前に立てた年末目標を修正しようと躍起になっていた。

しかし現在では、最盛期が過ぎた可能性があるとの見方のようだ。ブルームバーグが調査したストラテジスト20人の平均予想は、年末までのS&P500種の上昇率があと1%にとどまるとの見通しを示唆している。

原題:Risk-On Momentum in Stocks Succumbs to Mounting Growth Worries(抜粋)

--取材協力:Michael Msika、Elena Popina、Sujata Rao、Abhishek Vishnoi、Lu Wang.

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