(ブルームバーグ):金融界では6兆ドル(約876兆円)を超えるキャッシュが待機しているという話をよく聞く。いざとなれば巨額の投資資金が動き出す可能性があるという意味だ。

これは新しい話ではない。アナリストらはこれまでも、米利下げに伴い投資マネーがキャッシュからデュレーションの長い債券へと動き始めると予想してきた。つまり低い金利を受け入れるよりは、もっと長い期間で利回りをロックしたいという投資家の思惑が働くからだ。

しかしこれはデータに裏付けられていない。少なくとも現時点ではまだだ。前日のブルームバーグ報道によれば、米国のマネー・マーケット・ファンド(MMF)の資産残高は8月に約1270億ドル増え、月間として今年最大の純流入となった。米金融当局の利下げ開始前に高い利回りを確保する動きが広がったという。

TDセキュリティーズのジェナディー・ゴールドバーグ氏によれば、MMF資産総額は約6兆3000億ドルで、今後数年間かけて増加を続ける可能性が高い。

「MMFから資金を引き出して、株式あるいはデュレーションが非常に長い債券に投資する人はまれだ」とゴールドバーグ氏は30日に話した。「MMFに確認してみればそういう取引はほとんど起きていないことが分かるだろう」と述べた。

むしろよく見られるのは、現金等資産の投資家が30日から90日にデュレーションを伸ばす取引であり、それ以上のものではないという。「MMFで最大級の都市伝説がこれだ」とゴールドバーグ氏は指摘。キャッシュに近いファンドには向こう数年、ペースは鈍っても流入が続くとの見方を示した。

この話題をこの日最初に持ち出したのは、USバンク・アセット・マネジメントのエリック・フリードマン氏だ。こうしたキャッシュが必ずしも長期利回りの押し下げに寄与せず、リスク資産を支援さえしない理由について話した。同氏は株式にポジティブな見方だが、それは大量のキャッシュ資産が米株式市場にシフトしているからではないという。さらにこうしたMMF資金が10年債に向かうとも同氏は予想していない。米国債相場はここから上昇する見通しだという。

「10年債の適正価格は恐らく利回りで4%に近い水準だろう」とフリードマン氏。「デュレーションは少し割高になっているようだ。キャッシュの巻き戻しが起きても、多分違うところに向かうだろう。しかもそれは今後数週間、あるいは数カ月かけて極めてゆっくりと進行するタイプになりそうだ」と述べた。

原題:$6.3 Trillion Cash Pile Is Already in the Game: Surveillance(抜粋)

--取材協力:Emily Graffeo.

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