(ブルームバーグ):人工知能(AI)向け半導体メーカー大手エヌビディアの28日の決算発表は投資家の期待に届かなかった。売上高見通しは迫力に欠く内容で、前評判の高い次世代AI半導体「ブラックウェル」の生産上の問題に関するニュースも失望を誘い、株価は時間外取引で急落した。

発表資料によると、8-10月(第3四半期)の売上高は325億ドル(約4兆7000億円)前後になる見通し。アナリストの予想平均の319億ドルを上回ったが、一部では379億ドルに上るとの見方もあった。

また、エヌビディアの次の大きな稼ぎ頭となる新チップ、ブラックウェルのラインアップは、製造が予想以上に難しいことが判明し、遅れが懸念された。

これを受け、株価は時間外取引で一時8.4%下落した。2023年に239%上昇した同社株は今年、28日通常取引終値時点で2倍強の値上がりとなっていた。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、クンジャン・ソバニ氏とオスカー・エルナンデス・テハダ氏はリポートでエヌビディアの決算について、「非常に高く持続不可能な期待に直面していた」と指摘した。

今回の業績見通しは、エヌビディアを世界で2番目に価値の高い企業に変えたAIブームに水を差す恐れがある。AIソフトウエアへの対応を目指しデータセンターがアップグレード競争を繰り広げる中、こうした動きの最大の受益者である同社の売上高見通しはAI投資ブームのバロメーターとなっている。

同社は製造の歩留まりを改善するために変更を加えていると認め、具体的には「マスク製造工程」と呼ばれる部分に変更が必要だったと説明した。その上で、同製品から11-1月(第4四半期)に「数十億ドル」の売上高がもたらされる見込みだとした。

ジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)は決算に関する電話会見後にブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、ブラックウェルに関する懸念を巡り、製造が勢いを増した後は潤沢に供給していくと発言。「供給はとても多くなるだろうし、増産も可能だろう」と述べた。

ジェンスン・フアンCEO

ブラックウェルは今後数カ月で発売されれば、新たな成長の波を生み出すと期待されている。エヌビディアはブラックウェルの生産が11-1月期から増強され、来年度も継続されると説明した。

決算発表後の電話会見では、ブラックウェルがもたらす売上高の規模や時期についてアナリストらが詳細を尋ねたが、フアンCEOとコレット・クレス最高財務責任者(CFO)は11-1月期に数十億ドルを見込むと述べるにとどめ、それ以上詳しく説明しなかったことから、株価は時間外取引で下げ幅を拡大した。

フアン氏は会見でいつも通り、コンピューティング業界の高い将来性を予測し、世界のデータセンターに設置されている時代遅れの器具を置き換えるには、1兆ドル規模の機器が必要になると主張。その交換作業は始まったばかりだと指摘した。

エヌビディアはここ数四半期、ウォール街の予想を上回る決算を発表してきたが、上振れ幅は縮小傾向にある。

5-7月(第2四半期)の売上高は300億ドルと2倍余りに拡大した。一部項目を除いた1株利益は68セントだった。アナリスト予想は、売上高が約289億ドル、1株利益は64セントだった。

部門別の売上高をみると、主力のデータセンター部門は263億ドル。ゲーム用チップは29億ドル。市場予想はデータセンター部門が251億ドル、ゲーム用チップが27億9000万ドルだった。

同社の取締役会は500億ドルの追加自社株買いを承認した。

原題:Nvidia Tumbles After Disappointing Forecast, Blackwell Snags (1)(抜粋)

(CEOのインタビューや電話会見での発言などを追加し、株価を更新します)

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