半導体の受託製造(ファウンドリー)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)が、アメリカ政府から巨額の補助金を獲得した。
同社は4月8日、アメリカ商務省との拘束力のない予備的覚書に署名したと発表。これにより、TSMCがアリゾナ州で進めている半導体工場の建設プロジェクトに対して、アメリカの「CHIPS・科学法」に基づく最大66億ドル(約1兆19億円)の補助金が支給されることが固まった。
覚書によれば、アメリカ政府は上述の補助金に加えて最大50億ドル(約7590億円)の融資も提供する。TSMCはさらに、工場の建設投資の一部について最大25%の税制優遇の適用をアメリカ財務省に申請する予定だ。
史上最大の対米直接投資
TSMCは補助金の獲得と同時に、アリゾナ州に(建設中の第1工場と第2工場に続く)第3工場を建設すると発表した。それにより、プロジェクトの総投資額は650億ドル(約9兆8674億円)を超える見通しだ。
同社によれば、このプロジェクトは外国企業による対米直接投資としては史上最大規模となる。TSMCの董事長(会長に相当)を務める劉德音氏は、声明の中で次のように述べた。
「CHIPS・科学法(の成立)が、かつてない規模の投資を推進するチャンスをわが社にもたらした。アメリカ本土で最先端プロセスを用いた半導体製造サービスを実現し、アメリカの顧客に対してよりよいサポートを提供したい」
CHIPS・科学法は2022年8月、アメリカのバイデン政権がアメリカ国内での半導体の製造や研究開発を支援するために成立させた。同法には、アメリカ本土で半導体を製造する企業に対する総額約527億ドル(約8兆円)の補助金支給や、関連する税制優遇措置などが盛り込まれている。
アメリカ政府は先端半導体の国内製造を後押しするために「CHIPS・科学法」を制定した。写真は2022年8月、同法案に署名するバイデン大統領(アメリカ商務省のウェブサイトより)アメリカのホワイトハウスは4月8日、TSMCとの覚書締結に関する声明を発表。その中でバイデン大統領は、TSMCのアリゾナ工場が「2030年までに世界の最先端半導体の20%を(アメリカ本土で)生産する目標を実現する力になる」と期待を示した。
第3工場は2030年に稼働
TSMCが新たに投資するアリゾナ第3工場では、回路線幅2nm(ナノメートル)またはそれ以下の最先端プロセスを採用し、2030年までに生産を始める計画だ。
本記事は「財新」の提供記事です。この連載の一覧はこちら現在建設中の第1工場は、2020年5月の計画発表時には5nmプロセスを採用するとしていたが、後に4nmに転換。建設工事はまもなく完了し、2025年前半の量産開始を見込んでいる。
同じく建設中の第2工場は、2022年12月に計画を発表。当初予定の3nmプロセスに加えて2nmにも対応し、2028年に生産を開始するとしている。
(財新記者:翟少輝)
※原文の配信は4月9日
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