お茶でマリネした鯛料理に、炊き立てのご飯まで。
試飲会で料理の説明をする男性は、実は料理人ではなく“ある町工場の社長”なんです。

会場をよく見ると、カフェのすぐ隣には工房があり、「作る」「見る」「食べる」が一体となった、オープンファクトリーに。

“待ち”から“攻め”の経営戦略で生まれ変わった町工場とは?

様々な部品を削って、削って、削り続ける。
創業100年以上、高精度な切削加工を得意とする三重県の町工場「中村製作所」。

“空気以外、何でも削ります”をモットーに、産業用ロボットから宇宙ロケットの部品まで手掛けます。

しかし、リーマンショックなどの影響で倒産寸前に追い込まれた時期がありました。

中村製作所の4代目社長・山添卓也さんは、「継いだ当時は1社取引で、売り上げの90%がダウンして。トカゲの尻尾切りのように捨てられた経験をして。そこから、マインドリセットをして」と振り返ります。

独自の技術力はあるものの、ビジネスにうまく転換できていないという課題を感じていた、4代目社長の山添卓也さん。

そんな中、「削る」という技術をもっと身近に感じてほしいと、新たに自社ブランドを立ち上げました。

それが、“誰でも簡単に料亭の味を出せる”という「魔法の鍋」。
「土鍋の強みをさらに生かすのに、われわれが削ることで何かないかと。精密に削ることで、金属のふたと土鍋がぴったりと合うという、無水調理ができる土鍋に進化させました」と話す山添さん。

1000分の1mm単位まで対応できる高精度な切削加工で、密閉性を高める形状にして、蓄熱効果を上げ、食材のうまみ成分・水分を凝縮。
ご飯をおいしく炊けるほかに、土鍋に材料を入れて数十分間火にかけ止めると、あとは余熱だけで料理が完成する「蓄熱調理」が行えるように。

“形状を整える”だけではなく、“機能性を高める”という切削加工技術の新たな可能性を追求し、2023年から「オープンファクトリー」を展開。
職人と来場者をつなぐ場としても活用し、観光ツアーや学生のインターン、商品の体験会などを積極的に開催しています。

職人の高齢化・赤字経営などで廃業する町工場が増える中、「中村製作所」の売り上げは右肩上がりに。

異業種とのコラボレーションを次々と実現させ、新しいオリジナル商品の開発に力を入れています。

中村製作所 4代目社長・山添卓也さん:
フラワーベースとして活躍し、花を生かす存在。水をキレイに保てることで花を生かす。空気の循環であったり、温度を一定に保つことができる。

職人の技術の底上げにもつながり、部品加工事業にも好循環が。

中村製作所の職人は「30人前後の会社だったのが、今は3倍くらいに。下から優秀な職人が育ってくると、自分もモタモタしていられない」と話します。

中村製作所 4代目社長・山添卓也さん:
飛行機の部品をやらないかという話がきたり、ディズニーランドのアトラクションの部品、想像できなかった世界もありますし、自社ブランドで得た頭の柔らかさ、柔軟に新しい事にチャレンジしていく。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。