(ブルームバーグ):巨額の契約金を払ってオリンピックのスポンサーになった企業にとって、新型コロナウイルスに見舞われた東京大会とは違い、パリ大会は期待していたブランディング向上につながっており、安堵(あんど)感をもたらしている。
米民泊仲介エアビーアンドビーの最高ビジネス責任者、デーブ・スティーブンソン氏は「東京大会ではわれわれが関与し、支援できるようなものがあまりなく、がっかりした」と語ったが、パリでは自社のサービスを紹介できていると述べた。
パリ観光局の予測によれば、11日夜の閉会式までに国外からの150万人を含む約1130万人がパリを訪れる。米国で大会を放送するコムキャストのNBCユニバーサルと、欧州全域の放映権を所有するワーナー・ブラザース・ディスカバリーによれば、テレビとストリーミングによる視聴者数は東京大会の何倍にも急増している。広告枠を優先的に獲得できる主要スポンサーにとっては朗報だ。
パリへの観客流入により、オリンピックはエアビーアンドビー史上最大の単独イベントとなる。同社は2019年、5億ドル(約733億円)と報じられた契約を結び、20年の東京大会から28年のロサンゼルス大会まで、夏季と冬季五輪の世界スポンサーとなった。
同社のブライアン・チェスキー最高経営責任者(CEO)は、オリンピック期間中、同社のサービスを利用したパリの宿泊客は約43万人と、「想像以上の結果だった」と語った。
デルタ航空は4億ドルといわれる契約を結び、21年から28年まで米国オリンピック・パラリンピック委員会の公式航空会社となった。東京大会をきっかけに、ユナイテッド航空ホールディングスからその立場を奪った。
デルタ航空は米国代表選手全員のフライトを含むスポンサーシップを通じ、特に国際線を利用する旅行者へのブランド認知度向上を目指す。
ただ、先月に米国代表団を大会に送り出すのに波乱がなかったわけではない。米サイバーセキュリティー会社クラウドストライク・ホールディングスのシステム障害に見舞われたのは、1800人の選手やコーチ、スタッフと機材をパリに運ぶ直前のことだった。全員を時間通りに到着させるために奔走しなければならなかった。
製薬大手イーライリリーは「企業のブランドアイデンティティーを厳格に測定」しており、ポジティブなものと結びつけたいとの意向から、米国代表団のスポンサーになっていると、デーブ・リックスCEOは語る。
同社は数人の米国代表選手を製品の顔として起用。パリ五輪体操で3つの金メダルを獲得したシモーネ・バイルズ選手とその母ネリー氏は糖尿病治療薬「マンジャロ」のマーケティングキャンペーンに参加している。両者ともこの治療薬を使っていない。
バイルズ選手のチームメイトで、東京オリンピックで3つメダルを獲得したスニサ・リー選手は、自身が経験したアトピー性皮膚炎について語るキャンペーンに登場している。
オリンピック選手を起用した広告は、通常の同社広告を上回るとリックス氏は語る。米国代表の知名度は臨床試験で医師の協力意欲を高め、新入社員の採用や社員の士気向上に貢献する可能性がある。
リックス氏はスポンサー料については明言を避けたが、同社としては今年ケイトリン・クラーク選手が加入した女子プロバスケットボールWNBAのインディアナ・フィーバーとの契約をはるかに上回る、過去最大の契約だと述べた。
エアビーアンドビーと同じく世界スポンサーであるビザは、入場者数が好調なオリンピックの公式会場で唯一、現金以外の支払い方法を提供している。ビザのオリンピックへの投資は年々拡大しており、国際サッカー連盟(FIFA)ワールドカップや米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)を含む他のパートナーシップよりも規模が大きいという。
原題:Olympic Sponsors Say Paris Games Provide Lift Tokyo Couldn’t(抜粋)
--取材協力:Gina Turner.
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