猛暑が続く山陰地方では、農作物をはじめ私たちの暮らしにも猛暑の影響が及んでいますが、日本酒もピンチに追い込まれています。

きりっと冷やした日本酒で一献…夏の暑さも和らぎます。しかし…年々過酷になる猛暑が、日本酒をピンチに追い込んでいます。
創業約130年の老舗の蔵元、松江市の米田酒造です。

米田酒造・原健太さん:
実はこちらの「純米吟醸 松江づくし」というお酒なんですが、もしかしたら今年販売が終了する可能性があります。

「純米吟醸 松江づくし」、ラベルの文字は小泉八雲の曾孫である凡さんが揮ごう。こだわりある地元農家が作った酒米「山田錦」だけを使い、松江の水で醸した酒です。
販売開始から約30年、多くのファンを持つこだわりの酒が、早ければ年内にも販売中止になるというのです。そのわけは…。

松江市の農家の角智則さん。約100アールの水田で「松江づくし」に使われる酒米「山田錦」を生産しています。

酒米農家・角智則さん:
去年とか、一昨年とか、今年は、気温がボーンと暑くなったので、その間に高温障害が出る。ゆくゆくは穂が実らない。

今年もとどまる所を知らない猛暑。稲にとっても過酷な環境で、高温が原因と考えられる障害がみられるようになったといいます。

村上遥アナウンサー:
去年はどれくらい受粉してなかったのですか?

酒米農家・角智則さん:
99・9%です。

角さんは2023年に約5トンの山田錦を出荷する計画でしたが、記録的な猛暑の影響などでわずか60キロにとどまりました。

角さんは、「こんなに収穫できなかった年はなく、初めての経験」だと話します。
高温による障害が発生すると、稲は受粉することができず、米が実りません。穂を垂れず、真っすぐに伸びきった状態で収穫時期を迎えるといいます。2024年は前年を上回る猛暑が予想され、杜氏も頭を抱えています。

米田酒造 杜氏・上濱智信さん:
(高温障害を受けた)米は硬く、割れやすいため、精米した時にきちんとした形にならない。このためお酒が出来た後の酒粕が多く出来るし、お酒の量も少なくなっります。

高温障害の影響で仕込みに使える米の量が少なくなれば、当然、酒の生産量も低下します。さらに酒米のピンチに追いうちをかるのが…。

酒米農家・角智則さん:
これがイネカメムです。

「カメムシ」です。イネカメムシは、体長13ミリほどの黄褐色のカメムシで、斑点のある米や十分実らない米を発生させる恐れがあるといいます。2023年の秋ごろに、鳥取県西部から島根県東部にかけて大量発生しました。イネに発生するカメムシは3種類あり、島根県の病害虫防除所によると、2024年7月下旬の調査では、いずれも捕獲数が前年を大きく上回り、稲穂が出始める今ごろから8月中旬をピークに発生すると予想されています。
島根・鳥取両県は農家に対し、農薬散布などの対策を取るよう呼びかけています。

米田酒造・原健太さん:
高温もそうですし、我々が出来ることは難しいので、出来たお米に対して僕らがどうするかというところだと思うので、農家さんと一緒になって頑張れたら良いかなと思います。

猛暑、そしてカメムシの大量発生…かつてない酒米のピンチを乗り切ることができるのか、酒蔵の関係者はこの先の天候に気をもんでいます。

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