台風シーズン到来だ。忘れもしない13年前。店をオープンした1カ月後、まだ5月だというのに巨大台風が沖縄を襲った。

 この時の台風は雨がほとんど降らなかったため、街路樹までもが塩焼けして黒く変色し、野菜もすっかり焼けてなくなってしまった。

 私の店のコンセプトは「有機で地産地消」と決めていたため、県外の有機野菜を入手すべきか悩んでいると、ありがたいことに友人が、海岸から浜大根やツルナ、二ガナ、長命草などを持って来てくれた。そうか、何かあったら野草を食べればいいのか! これは大きな学びだった。

 同時に、たった一度の台風で、手塩にかけて育てた野菜や果実、時にはハウスなどの施設も損壊してしまう農家の苦労も知ることになった。

 近年は気候変動による高温被害や、水害なども増加している。不作になれば農家の収入は減少する。これは離農の原因にもなっている。

 こういった農家が抱える窮状を、食べる側も知り、意識を変える必要がある。気候危機で海外からの安い野菜も買えなくなる日がくるだろう。

 今のうちに県内の農家を応援する仕組みを作らなければと、地域支援型農業(CSA)の考え方を取り入れたオーガニック島やさいネットワーク「ベジんちゅ」を4年前に西原町の新島ファームと立ち上げた。

 CSAとは地域の農家を地域の人々が買い支える仕組み。日本で生まれ、今や世界各国で実施されている相互扶助システムだ。会員になれば、新鮮な有機野菜セットを安価で手に入れられる。

 昨年8月に来た1週間に及ぶ長い台風で、新島ファームは2カ月間出荷できないほど大きな被害を受けたが、この仕組みのおかげで定額収入が得られた。会員は返金ではなく、2カ月分の野菜を豊作時に返してもらう。

 このCSAの支え合いの仕組みが広がれば、沖縄の農業はもっと元気になるはずだ。

(浮島ガーデン店主)

次回は仲本和美氏(仲松ミート執行役員)です。

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