(ブルームバーグ):日本の金融機関が近く発表する4-6月期決算には、日本銀行によるマイナス金利解除の影響が初めて全面的に反映される。市場では日本株上昇の原動力となる堅調な収益が期待されている。
日銀が年内に追加利上げを実施するとみられていることから、銀行の収益性が改善するとの期待が高まっている。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)は、国内の資産や日銀当座預金の比重が高い銀行は、利上げに対する収益感応度がより高くなると予想している。
BIの伴英康シニアアナリストはリポートで、日本の銀行セクターの株価純資産倍率(PBR)は昨年12月末の0.66倍から6月末に0.85倍に上昇したとし、日銀がさらに金利を引き上げれば、より多くの銀行で株主資本利益率(ROE)が8%を超えると分析した。
インベスコ・アセット・マネジメントのストラテジスト、デービッド・チャオ氏は、「今期業績の上方修正の多くは金融業界からもたらされる」とみている。日銀が来週の金融政策決定会合で利上げに踏み切ると予想する同氏は、「金利が上昇すれば業績が向上する」として「銀行、証券、保険会社の順に選好している」と述べた。
三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの三大銀行グループは来週、今期(2025年3月期)第1四半期決算を発表する予定だ。
東証33業種の銀行業指数は年初来で約36%急騰し、上昇率は東証株価指数(TOPIX)の2倍を超える。日銀は3月、長年にわたって銀行の金利収入を圧迫してきた世界最後のマイナス金利政策を撤廃した。
それでも銀行業指数の株価収益率(PER)は15倍程度で、TOPIXの約17倍に比べて割安感が残る。ブルームバーグがまとめたデータによると、アナリストによる向こう12カ月の業績予想は銀行業指数が昨年末時点から25%切り上がり、TOPIX(13%)を上回っている。
日銀の利上げによる恩恵は各社とも似通ったものになるとみられるが、企業固有の要因によって個々の業績には乖離(かいり)が生じる可能性がある。5月の前期決算発表を振り返ると、MUFGは自社株買いの規模がアナリストの予想を下回り株価が下落した一方、三井住友FG株は今期のガイダンスが市場予想を上回ったことから上昇した。
BIの伴氏はMUFGの4-6月期について、純利益は前年同期比で25%超の減益となる可能性があると予想。追加の自社株買いは第2四半期以降になるかもしれないと指摘している。
持ち合い解消
規制当局から政策保有株の削減圧力を受けている損害保険会社に続き、銀行も株式の持ち合い解消に伴う利益を得ると予想されている。保有株売却の拡大は銀行グループにとって、証券部門の手数料収入にもつながっている。
アラブ首長国連邦(UAE)のハビブ・インベストメントで投資アドバイザリー部門を率いるサンディープ・ジャドワニ氏は、持ち合い解消により金融機関には大きな収益機会が生まれていると分析。日本企業の4-6月期決算では、金融が最も大きなポジティブサプライズをもたらす業種の一つになると述べた。
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