特集は注目の商店街にオープンした店です。長野県辰野町に初めて窯焼きの本格ナポリピザの店がオープンしました。場所は空き店舗の活用に力を入れる商店街。後押しを受けて移住のピザ職人が奮闘しています。


生地を薄くのばし、トマトソースやチーズを乗せて、薪窯に。

わずか1分で、ナポリピッツァが焼き上がりました。

客:
「おいしい」


7月1日、オープンした辰野町の「薪窯ピッツェリア メリオ」。

腕を振るうのは、東京から移住してきた井上恵一さんです(36)。

薪窯ピッツェリア メリオ・井上恵一さん:
「地域一号店だと思うので初めてのものを町のみんなに食べてもらうのは、すごくワクワクするところですね。気軽に来られる場所というのがまず一番最初の目標」


場所は空き店舗の活用に力を入れる通称「トビチ商店街」。ピザ店は地域の新たな魅力となっています。


福岡出身の井上さん。東京の料理専門学校時代、初めてナポリピッツァに出会いました。

井上恵一さん:
「衝撃でしたね。もう言葉じゃ表せないくらい、世の中にこんなうまいものがあったんだと」

その後、ピザ職人の道に進み、2018年、ナポリピッツァの全国大会で3位に入るほどの腕前に。


しかし、家族と過ごす時間が取れないもどかしさから、一度は会社員になります。

これが、かえってピザへの思いを強めることに。

井上恵一さん:
「胸を張って『お父さんはこういう仕事やってるんだ、見てみろ』みたいな。そういうのが自分の中ではその時できないなって。やっぱり自分の中では飲食しかないのかなって」


そこで目を向けたのが妻・未紀さんのふるさと・辰野町。信州に移住して地元食材を使ったピザ店をー。

井上さんのビジョンが定まりました。

一方、その辰野町では商店街の再生が進んでいました。

かつては多くの店が並びにぎわった下辰野商店街。車社会の到来などで徐々に活気を失い、いわゆるシャッター街に。


そこに新たな風を吹かせたのが、元集落支援員の赤羽考太さんです。出店支援などを行う会社を立ち上げ若者の事業を応援してきました。

その結果、この数年で、続々と新たな店がオープン。店が点在する様子から「トビチ商店街」と名付け、活動しています。

井上さんのビジョンを知った赤羽さん。井上さんを会社の役員として招き「ピザ事業部」を設立。出店を後押ししました。

トビチカンパニー・赤羽孝太さん:
「この街の今の状況を見ながら、可能性あるよねとか、面白いよねと言ってくれるのですごくありがたい」


かつてのバスターミナルで、その後、スナックとして使われたこともある建物を2カ月ほどでピザ店に改装しました。


7月1日―。

迎えたオープン当日。

イタリアから空輸した「薪窯」に火を入れてランチの準備。

妻の未紀さん、次男の可偉ちゃん(3)が応援に―。

妻・未紀さん:
「こんなに見違えるようにお店も変わったし、どんどん盛り上がってほしいなと思います」


「じゃあ、オープンしますよ~。どうぞどうぞ。いらっしゃいませ」

午前11時半、ランチ営業スタート。

最初の客は雨で電車が止まり、辰野で降りたという東京の女性。

定番のマルゲリータを注文ー。

東京から来店:
「もちもちして、トマトが甘くておいしかったです。雰囲気とかもいいなって思うし、この地域全体もいいと感じました」


あいにくの雨でしたが、客は次々と。地元の91歳の男性はテイクアウトしました。

地元の男性(91):
「これはおいしそうだ。新聞に出たから楽しみに飛んできた、いの一番に。これね、待ってるんだよ、腰の曲がったおばあちゃんが」

気軽に立ち寄ってもらおうと、ランチのピザ6種類は全て1000円(税込)。会計を済ませたら店内だけでなく、外や同じ建物の裏にあるダンスホールで自由に食べることができます。

山形村から:
「本格的なビザを食べられるって、辰野町の皆さんうらやましいですね」

プラス330円で頼めるサラダにもこだわりが。葉物野菜は井上さん自ら収穫したものです。

前の日、井上さんは町内の山深い集落へ。

井上恵一さん:
「あ、すごーい。これなんですか?」

農家民宿「月のもり」・市川直美さん:
「これもレタス、こういう模様なんです」

井上恵一さん:
「3種類とももらいたい」


農家民宿を営む市川直美さんの畑で珍しいレタスやケールを仕入れました。

ケールを食べてー

井上恵一さん:
「おいしい!噛んでると甘みが出てくる」

農家民宿「月のもり」・市川直美さん:
「都会でお仕事されてた方が『うまい』って本心で言ってくださってる。生産者として『やった!』ていう気持ち。おいしい野菜を作りたいという思いが強くなってうれしいですね」


トマトはお隣・箕輪町産。

ブドウ棚のように茎や葉を広げさせる「水平放任」という方法で栽培された「信州トマト工房」の評判のトマトです。


客:
「野菜の味が深い」

町内から:
「おいしいですね、新鮮な感じ。地産地消な感じがいいですね」


トビチ商店街の仕掛け人・赤羽さんも、応援がてら、食べにきました。

トビチカンパニー・赤羽孝太さん:
「うまいな!」

赤羽孝太さん:
「(客からすると)飲食って、やはりすごくハードルが低い、入りやすい。人流ができれば、もっと関わりたいなと思ってくれる人が増えたり、いろんな関わり方の提案、場であったり、時間であったりをこれからも提供できたら」


翌日の仕込みをはさんで夕方5時からはディナー。

女子高校生:
「これうまそうじゃない?」

準備中から気になっていたという女子高校生2人。

女子高校生2人:
「せーの」
「うま!めっちゃおいしいです」
「ちゃんとしたピザ、初めて。また来たい」


こちらの親子は、トマトたっぷりの「マリナーラ フィレット」を注文。

女性は信州トマト工房のスタッフでした。


母親:
「なかなか、こんなおいしいピザ食べられるところないから、うれしいです。(トマトが)実際、使われているのを見ると、採ってるかいがあるなと」

娘:
「(お味はどう?)おいしい!」


その後もにぎわった店。閉店2時間前の夜7時には完売し、手応え十分の初日となりました。

薪窯ピッツェリア メリオ・井上恵一さん:
「待ち望んでました、みたいなのがすごく伝わってくるんで、よかったです」

店とトビチ商店街の可能性を信じ、井上さんは、店を「Meglio(メリオ)」と名付けました。イタリア語で「より良く」という意味です。

薪窯ピッツェリア メリオ・井上恵一さん:
「街がよくなっていく、第一歩。人がたくさん集まってきて、人がたくさん帰ってきて、お店が集まるようなきっかけになれればと思ってます」

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