(ブルームバーグ): 米国株市場での投資人気に連動し、足元で強い動きを見せる日本の中小型株の上昇は短命に終わる可能性がある。年内に利下げが見込まれる米国に対し、日本銀行は追加利上げのタイミングを探るなど金融政策事情が異なり、金利上昇が財務の弱い中小型株にとってリスクとなるためだ。

  米国の代表的な小型株指数であるラッセル2000指数は7月第2週以降に上昇基調が強まり、18日時点の期間パフォーマンスは8.5%高と米S&P500種株価指数の0.4%安を大きくアウトパフォーム。日本でも中小型株の東証グロース市場250指数が同期間に5%高、TOPIXスモールグロース指数が0.7%高となっており、東証株価指数(TOPIX)の0.5%安を上回る。

  ピクテ・ジャパンの田中純平ストラテジストは「ごく短期のトレードの範囲。その先はファンダメンタルズを反映して日米の連動性が低下していくだろう」と予測。日本の中小型株が米国に連動する期間は「2-3カ月以内だろう」とみている。

  日本の中小型株の上昇局面が短命に終わるかもしれない要因の一つは日米の金融政策の違いだ。為替市場での円安の長期化を受け、日銀に対しさらなる金融引き締めを求める政治的圧力が高まっており、今後国内金利の上昇傾向が強まると、大型企業に比べ財務が脆弱な中小型や新興企業は借入金返済などの負担が増すリスクがある。

  金融政策見通しを反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)では、9月までに日銀が10ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)利上げする確率を94%織り込んでいる状況だ。JPモルガン証券の高田将成クオンツストラテジストは、円安や日本のインフレ基調が明確に転換しない限り、日本の小型株の「本格的かつ持続的な失地回復は予見しづらい」と分析する。

  日本の中小型株にはバイオテクノロジーやサービスなど内需関連企業が多い点も懸念材料の一つ。国内景気の足踏みや円安によるコストの上昇が業績を圧迫する可能性があるためで、みずほ証券の倉持靖彦マーケットストラテジストは「東証グロース市場のような中小型株は足元の業績回復の水準が大企業に比べ低い。中小型・新興企業は基本的に財務も弱く、金利コスト上昇に対する耐久性は劣る」と話す。

トランプ前大統領Photographer: Hannah Beier/Bloomberg

  一方、米国の中小型株は米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ観測の高まりに加え、減税や低金利政策を打ち出すトランプ前米大統領の返り咲きを見込む「トランプトレード」の2つの側面から投資人気を集めている。

  トランプ氏が大統領選で勝利した2016年のケースを見ると、11月からの1カ月間でラッセル2000は2割上昇。今回は選挙前から上昇ペースが早く、人工知能(AI)人気による大型テクノロジー株への一極集中相場の反動が起きている点も中小型株を後押ししているようだ。

  ピクテの田中氏は「米国ではナスダック100指数の構成銘柄からラッセル2000へ資金シフトが活発化している」と指摘。米テクノロジー株や半導体関連の軟調が続けば、「短期的にはテクノロジー関連のポジションをいったん閉じ、新規に小型株を買い建てるトレードが日米共通で起こりやすい」とみる。

  米半導体株は17日の取引で20年以来、4年ぶりの大幅下落となるなどこれまでの上昇トレンドに陰りが出ている。一方、18日は17年以来の買われ過ぎ水準に達していたラッセル2000も約2%下げた。

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