来年春に卒業する高校生の就職活動が今月から本格的に始まりました。就活現場では「厚待遇」「残業なし」「初任給大幅アップ」と企業はあの手この手で高校生の確保に動いています。求人倍率は過去最高を記録。まさに令和版「金の卵」の採用合戦が行われています。
「初任給は25万円、4月は追加で15万円」 令和版“金の卵”争奪戦始まる
記者
「様々な企業が集まった就活イベントですが、実はこちらのイベント、高校生限定なんです」
7月から本格的に始まった高校生の就職活動。さいたまスーパーアリーナでは合同企業説明会が行われ、北海道から九州まで45の企業が集まりました。
セントラル警備保障 採用担当者
「労働人口が減っていて、大卒社員だけではなかなか新卒の採用がうまくいかない」
深刻な人手不足の中、今、高校生たちには熱い視線が注がれています。高卒者の求人倍率は今年、全国平均で過去最高の3.98倍を記録。高校生有利の超売り手市場になっているのです。
実際に警棒を使わせたり、防弾チョッキを着せたり…体験を通して、企業側は仕事の楽しさをアピールしていました。
高校3年生
「“仕事ってこんな感じなんだな”って、軽はずみだけど想像できた」
運送会社のブースでは…
寿ロジコム 採用担当者
「そうそうまっすぐ行って、クリアクリア。はいオッケーです。うまい!」
「即戦力で行けますよ。免許取ってからですけどね」
待遇面を引き上げる動きも広がっています。
ハイデイ日高 採用担当者
「(初任給を)23万円から24万5000円に上げました」
ゴルフ場運営会社は充実した家賃補助をアピール。「1万円で1人暮らし!」のうたい文句が。さらに…
太平洋クラブ 採用担当者
「(初任給)25万円になります。それ以外に『支度金』があって、4月の初任給で15万円を(追加で)振り込む」
お得なクーポンを配る企業も。
クオーレ 採用担当者
「ファミリーレストランのドリンクバーが100円台になったり、ラーメン店の替え玉が無料になったりする」
まさに令和版“金の卵”の争奪戦が巻き起こっているのです。
一方、高校生が持つ可能性そのものに注目している企業もあります。こちらのIT企業は社員の半分が高卒です。
Oookey 菊地伸CEO
「色んなアプリとかツールを使うことが最初から身についている。先月が遠い昔だったぐらい、色んな事ができるようになっている」
入社2年目、19歳の飯田さん。
システムエンジニア 入社2年目 飯田さん(19)
「(プログラム)コードを扱うこと自体を初めてやったのは中学生の時で…」
生成AIも使いこなし、瞬く間にプログラムコードを書いていきます。飯田さんはこれまでに公的事業のシステム開発などを担当してきました。
システムエンジニア 入社2年目 飯田さん(19)
「年齢は関係ないと思います。とにかくスキルがある人がちゃんと報酬をもらえるべきだと考えていますし、それだけもらえる場というのが設けられている環境なんじゃないかなと」
飯田さんは現場でスキルアップするため、進学ではなく就職を選択。こうした考えはウェブデザイナーの石川さんも…
ウェブデザイナー 入社2年目 石川さん(仮名・20)
「進学ではなくて、そのまま就職を選んで良かったなと思っている。色んな経験をして、社会人としてもデザイナーとしても成長したい」
社員・アルバイトの「歌手デビュー」を応援する取り組みも
小川彩佳キャスター:
高卒人材の獲得に企業も力を入れてるようです。
トラウデン直美さん:
今、小学生や幼稚園の早い段階から、情報へアクセスできてしまう時代ですから、伸ばせるもの(スキル)を伸ばしきっている人もいるだろうなと思います。高校生と話す機会が時々あるのですが、すごくしっかりしているなという高校生も本当にいますから、即戦力になるだろうと感じます。
就職も良いですが、後から「学び直したい」と感じたときに大学や専門学校などで学び直しやすい環境を整えておくことも必要かなと思います。
小川キャスター:
柔軟な環境整備も必要ですね。
日本総研主席研究員 藻谷浩介さん:
私は昭和39年(1964)生まれで、昭和時代は高卒か大卒かだけで身分差別があって、どんなに優秀な人でも給料が安いという時代でしたが、現在は本人の能力に応じて評価されているように感じます。高卒でも働く気がない人もいれば、やる気に満ちている人もいますし、大卒でも同じことがいえますので、学歴での区別には意味がありません。
高校を卒業して活躍する人はもっと増えていいはずですし、その後に進学しても良いと思います。ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズも、大学を中退しているわけです。
世の中には大谷翔平選手のような人がいたり、多様化しています。学歴では区別できない時代になっていると感じます。
藤森祥平キャスター:
企業は色々な手を使って人材確保につとめようとしています。
モスバーガーを運営する「モスフードサービス」は、社員やアルバイトの夢のサポートとして、歌手デビューを応援する取り組みを始めました。
2024年3月に音楽レーベル「モスレコーズ」の立ち上げを発表しました。▼全国の店舗で働く社員・アルバイトを対象にオーディション、▼モスバーガーの公式サイトで宣伝、▼世界に楽曲を配信予定ということです。発表後、アルバイトの応募数は前年に比べて1.3倍増えたそうです。
10代から50代までの100人がオーディションに応募したということです。現在15人が書類選考を通過し、選考待ちとなっています。
オーディションに参加した女性は「チャンスをもらえる。バイトも頑張ろうと思います」と話しているということです。
トラウデン直美さん:
ここから大スターが生まれる可能性もあるということで、企業としてもプラスですよね。
小川キャスター:
夢を追いながらバイトをする人は多いですから、企業が夢を後押ししてくれるのは嬉しいことですよね。
“釣り人採用”する企業も 連続5日間の「鮎釣り休暇」など
藤森キャスター:
岐阜県白川町の藤井電気工業は、人材確保のため、趣味に特化した「釣り人」採用が始めました。近くに鮎釣りで有名な白川が流れていて、渓流釣りを楽しむには最高の環境だといいます。
毎年6月に鮎釣りが解禁されますが、連続5日間の休暇を確約した「鮎釣り休暇」が取得できたり、「釣り遠征費・グッズ購入補助」なども出るそうです。白川だけではなく、本社裏には黒川という川が流れていますので、お昼休みには釣りが堪能できる環境だということです。
日本総研主席研究員 藻谷浩介さん:
こういう企業は全国的に増えるべきだと思います。従業員を甘やかすということではなく、人間は本来、仕事と趣味の両方を持っている人が幸せなのではないでしょうか。
仕事を辞めてから人生の3分の1の時間がありますから、「仕事を辞めてからはやることがない」となってしまうのは、よくないと思います。社会のためにも、趣味も仕事も持っている人を世界的に増やすべきだと思います。アウトドアな趣味がおすすめなので、企業には藤井電気工業のような採用をがんばって増やしてもらいたいですね。
トラウデン直美さん:
地域の宣伝にもつながって、すごくいいと思います。
藤森キャスター:
取り組みを実施している藤井電気工業の社長は「うちのような田舎の建設業は、こうでもしないと人材が集まらない」としています。
日本総研主席研究員 藻谷浩介さん:
アウトドアができない東京に集まっている日本はおかしいと感じます。アメリカでは、お金持ちもアウトドアが好きで地方にいるという場合が多いように思います。(日本も)多様な働き方ができるといいですね。
小川キャスター:
地方への分散に繋がるかもしれません。一過性ではなく持続可能な流れに繋がっていくと良いですね。
“高卒者の就職”について「みんなの声」は
NEWS DIGアプリでは『高卒者の就職』について「みんなの声」を募集しました。
Q.高卒者の就職 “強み”は?
「ハングリー精神」…9.4%
「デジタルスキル」…16.3%
「若者の視点」…28.4%
「素直さ」…27.2%
「その他・わからない」…18.8%
※7月10日午後11時19分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
※動画内で紹介したアンケートは11日午前8時で終了しました。
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<プロフィール>
トラウデン直美さん
慶応大学法学部卒
環境問題やSDGsについて積極的に発信
藻谷浩介さん
(株)日本総研主席研究員
著書「デフレの正体」
NYコロンビア大学ビジネススクール卒業
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