(ブルームバーグ): インターネット検索の巨人、そして人工知能(AI)のイノベーターでもあるアルファベットの価値は、株式市場でその価値を2兆3000億ドル(約371兆円)と評価されている。しかしこの巨額の時価総額には、動画投稿サイトのユーチューブが持つ本当の価値が十分に含まれていない。ニーダムのアナリストらが指摘した。
ローラ・マーティン、ダン・メディナ両氏は3日付けのリポートで、ユーチューブこそ世界有数の価値あるメディア企業であり、それだけで4550億ドル以上の価値があると指摘。これは動画配信大手ネットフリックスの時価総額を50%余り上回る。
アルファベットはその構造上、特にユーチューブなどバラバラな事業が十分に評価されていないと両アナリストは主張する。ニーダムによるアルファベット株の投資判断は「買い」、目標株価は210ドルと、5日に記録した過去最高値を10%程度上回る。
「ユーチューブには価値が隠されており、投資家は単体として取引できない。これを閉じ込めているグーグルというコングロマリットには、ほかに多数のリスクがある」とマーティン氏はインタビューで述べた。そのリスクとは、AIが検索を駆逐するかもしれないという脅威だ。この脅威は「ユーチューブとは何ら関係ない」とマーティン氏は話した。
アルファベットの株価は10日に一時1.2%上昇した。
ユーチューブを分離した場合、ストリーミング配信を支配する同事業に資金を投じたい投資家だけでなく、爆発的なAI部門の成長を担うアルファベットをさらに評価する投資家も、恩恵にあずかるだろう。ニーダムによれば、ユーチューブのわずか5%が分離され取引可能となれば、アルファベットの株価を15ドル押し上げる効果がある。
「コングロマリット株は買い手を遠ざける。投資家は『この3事業は良いが、あの事業は良くない。だから買わない』という考え方だ」とマーティン氏は語った。
もちろん、このことに気づいたのはニーダムのアナリストが初めてではない。アルファベットの広大な構造はさまざまな事業が持つ真の価値を不明瞭にしているとして、昔から批判されてきた。長年にわたり会社分割を求める規制当局の姿勢は、多くの投資家から脅威とみなされるどころか喝采を浴びてきた。
LPLファイナンシャルのチーフ・グローバル・ストラテジスト、クインシー・クロスビー氏によれば、アルファベットや同業の大型ハイテク企業が投資家の声に耳を傾け、近く事業分離を検討する兆候はほとんどない。
「成熟した企業にはヘッジファンドやアクティビスト(物言う株主)がスピンオフを要求することが多い」とクロスビー氏。「大型ハイテク企業にはまだ及んでいないようだ」と述べた。
アルファベット株は今年、マイクロソフトやアップル、アマゾン・ドット・コムなど大型ハイテク企業の大半を上回るパフォーマンスとなっている。ただAI半導体への天井知らずの需要に支えられ、エヌビディアは165%の記録的上昇で突出している。
原題:YouTube Is a $455 Billion Media Giant Hiding in Plain Sight (1)(抜粋)
--取材協力:Subrat Patnaik.
More stories like this are available on bloomberg.com
©2024 Bloomberg L.P.
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。