(ブルームバーグ): 公募投資信託市場で運用会社が受け取る報酬の料率が低下している。低コストが一つの特徴であるパッシブ投信人気の高まりが背景だが、報酬率低下の波は今後、運用力で勝負するアクティブ投信に及ぶ可能性もある。

  投資信託の報酬は、純資産総額の一定比率が運用会社と販売会社、受託会社にそれぞれ配分される。野村総合研究所はこのうち運用会社の取り分(運用報酬率)を推計した。2023年度の平均(上場投信、マネー・リザーブ・ファンド除く)は年率0.43%と14年度の0.52%から0.09ポイント低下した。

  運用報酬率が低下した要因は、市場指数(インデックス)に連動する運用成果を目指す一方、機械的な運用によりコストを抑えたパッシブ投信の投信市場全体に占める比率拡大だ。低コストは投資家に恩恵をもたらす一方、運用会社にとっては収益の圧迫要因となる。

  野村総研の金子久チーフリサーチャーは報酬率低下について、パッシブ比率の上昇だけでなく、パッシブ投信の報酬率自体が「競争により下がっている」ことも一因と分析する。

  同社が資産クラスやパッシブ・アクティブの別で運用報酬率を集計したところ、海外株式パッシブのカテゴリーで低下が目立った。三菱UFJアセットマネジメントが運用する資産残高4兆円規模の「オール・カントリー(オルカン)」などが入るこのカテゴリーの23年度平均報酬率は14年度から0.14ポイント低下し年率0.09%となった。

  「オルカン」は業界最低水準の運用コストを目指すとする「イーマクシススリム」シリーズのファンドだ。オルカンの目論見書によると、運用報酬率は0.0175%以下。過去1年で純資産を約2兆7000億円拡大させるなど人気化し、投信のコスト引き下げ競争をけん引してきた。

プロダクトガバナンスの圧力

  新NISA(少額投資非課税制度)や株高を追い風に、公募投信の純資産総額は5月末で229兆662億円と、過去最高を更新した。残高増加を受け運用業界の収益は堅調だが、パッシブ投信の報酬率低下の影響は、今後アクティブ投信にも及びそうだ。

  パッシブの報酬率が下がれば下がるほど、アクティブは運用コストが高い分の価値を一段と問われ、売りである運用力の強化を一層迫られる。金融庁は運用会社に顧客の利益にかなった商品を提供する「プロダクトガバナンス」の実践を求めている。

  プロダクトガバナンスを巡り金子氏は、「自社のファンドが顧客に付加価値をもたらしているのか、報酬率を含め妥当性の検証が求められている」と指摘。価値を提供できていない商品については、運用の改善や報酬率引き下げが検討課題になるとの見方を示した。

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