(ブルームバーグ): 日本株市場では東証株価指数(TOPIX)が日経平均株価をアウトパフォームしやすい流れが長期化しそうだ。高水準に積み上がった個人投資家の信用買い残が今後解消されると、半導体などの人工知能(AI)関連株の上値を重くするリスクがあるためだ。

  東京証券取引所によると、信用買い残は6月第3週に18年ぶりの高水準に達し、その後も高い水準を保つ。特にことしはAIブームで人気化した半導体関連株で残高が急増。東京エレクトロンの買い残は昨年末から469億円増え、TOPIX採用の時価総額上位500社で最大の増加となっている。

  日経平均は半導体やグロース(成長)株のウエートが高く、決済期日の到来や株価の伸び悩みで今後買い残の手じまいが本格化すれば、影響をより受けやすい。日経平均をTOPIXで割ったNT倍率は3月に3年弱ぶりの高水準を付けた後は反転。両指数は今月そろって史上最高値を更新したが、上昇の勢いには今後濃淡が付く可能性がある。

  「半導体関連株は3月近辺に高値を付けた銘柄が多く、信用残の整理が上値を重くしていく可能性がある」と、三木証券商品投資情報グループの北澤淳次長は語る。

  東エレクやSCREENホールディングス、信越化学工業といった半導体関連銘柄の株価は3-4月に高値を更新し、その後はレンジ内の推移が続いている。

  信用買い残の影響は、AI関連のチップ製造やデータセンターでの電力需要拡大への期待で盛り上がった電力株の一部でも大きくなる可能性がある。主要500社のうち、東京電力ホールディングスは年初来で買い残が8番目に多く増えた。時価総額対比の増加率では北海道電力が1.8%と7番目の大きさだ。

  ことしは投資家が好む成長株の代表格であるSHIFTも、株価が下がり続ける中で信用買いが急増。このほか主要500社では、レーザーテック、三菱重工業、ディスコ、NTT、トヨタ自動車、日立製作所、楽天グループなどでも買い残の増加が目立つ。

  東証プライム市場の売買代金は2-3月には6兆円を超える日もあったが、6月以降は5兆円を下回るケースが多い。アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは半導体など成長株は春に人気が集中し過ぎた面もあるとし、「現在の低調な売買エネルギーから考えると、買い残が多い銘柄の需給は相対的に悪くなる」と語る。

  もっとも、「半導体・グロース株が信用買い残の整理で休んでいる間に、その対極にあるバリュー(割安)株が物色されていることは良い資金循環だ」とも三井氏は指摘。夏場以降に信用の整理が進んで売買代金も回復するようなら、半導体・グロース株に再度注目が集まる可能性があると予想した。

  信用取引残高は9日の取引終了後、5日時点の最新データが公表される予定だ。

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