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 20年ぶりの新紙幣発行が話題になる一方で、完全にスルーされた紙幣がある。2000年に発行された2000円札だ。1万円札や5000円札、1000円札と比較して、使える自販機も少なく、いつしか消えた存在になっていた。

【映像】沖縄のATMにある「二千円札優先ボタン」

 金融アナリストの久保田博幸氏は「本当にニーズがあったのか。本気で流通させようと思っていたのか。『面倒くさい』『1000円や5000円でいい』となったのでは」と疑問を呈する。一方で、沖縄では、今も普通に流通している。街頭では「券売機で使える」との声が聞こえ、ATMにも「二千円札優先」のボタンがある。

 あるデータによると、沖縄県内の2000円札の量は、2001年の200万枚弱から、2024年には800万枚超えと約4倍になった。なぜ沖縄だけ2000円札が普及しているのか。政治ジャーナリストの青山和弘氏は、「2000円札は政治的な意味が強いお札だ」と指摘する。青山氏によると、2000円札は小渕恵三元総理が発案した。

「小渕氏は沖縄への思い入れが強く、悪く言うと、沖縄の利権をずっと握ってきた派閥だ。自分の政権下でサミットを沖縄で開き、2000年の節目に2000円札を作る。国家が権威として発行する通貨に守礼門を描くことで、沖縄は日本の大事な場所とアピールしたかった」(政治ジャーナリスト・青山和弘氏)

 2000円札は1999年10月に発表され、約9カ月後の2000年7月に発行された。今回の新紙幣が、発表から発行まで約5年かかっていることと比較して、格段に短いスケジュールだ。「建物であれば許諾の問題が起きない。できるだけ短期間で仕上げるために、構造物を題材にした」。しかし小渕氏は2000年4月に脳梗塞を発症し、2000円札発行前の5月に死去した。青山氏はそこに、2000円札が沖縄のみで流通する理由があると解説する。

「小渕派・田中派・竹下派が主流だった時代から、沖縄に寄り添おうという流れがあった。そこから森派の時代になり、歴史的な自民党内での権力構造の変化が、2000円札の歴史そのものに直結した」(青山氏)

 小渕氏の平成研究会(のちの茂木派)から、森喜朗元総理の清和会(のちの安倍派)に総裁派閥が変わり、その中で「いつの間にか忘れられた紙幣になった」。小渕氏が沖縄へのアピールとして生んだ2000円札だが、ライバルの森政権では本気で流通させようという動きが起きなかったと、青山氏は見ている。

 そんな2000円札だが、これだけ見かけないのであれば、逆に高値が付くのではないか。アンティーリンクの渡邉博代表は「今の若い人は、2000円札を見たことがないから、おばあちゃんの家で見つけたら価値があるんじゃないかと思って買い取り依頼を出す」としつつ、「実際は額面通りの2000円で、買い取りはできない」と語る。なお、ゾロ目や、順番に数字が並ぶ「階段」などの珍しい番号は、未使用紙幣に限って額面以上で買い取られることもあるという。

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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