(ブルームバーグ): フランス国民議会(下院)選挙の決選投票を7日に控え、マクロン大統領の中道連合と左派の新人民戦線は、極右の国民連合(RN)の絶対多数獲得を阻止するため戦術的な候補者調整に奔走している。

  候補者の届け出は2日午後6時に締め切られる。仏紙ルモンドによれば、これまでに左派から123人、マクロン氏陣営から64人を含む190人が辞退を決めた。

  6月30日の第1回投票では、マリーヌ・ルペン氏が実質的に率いるRNとその同盟勢力が33.2%の票を獲得し、得票率首位となった。左派連合の新人民戦線は28%、マクロン大統領の与党連合は20.8%だった。

RNのバルデラ党首Photographer: Nathan Laine/Bloomberg


  第1回投票の結果、577選挙区の半数以上で3人が決選投票に進むことになった。このような場合、3位の候補者は、他の主流政党がRNの候補を破る可能性を高めるために、辞退することもできる。

  中道派のアタル首相と極右RNのジョルダン・バルデラ党首は1日、仏テレビTF1のインタビューにそれぞれ応じ、支持を求めた。

  絶対多数の議席獲得を目指すバルデラ氏は、7日の決選投票でRNの候補者を支持するよう呼びかけ、「過激主義や急進主義を受け入れない穏健な左派有権者」にまでも訴えかけた。一方のアタル氏は、極右勢力の過半数議席獲得を阻止するため、全勢力が力を結集するよう訴えた。

  アタル氏は右派、左派を含む政党を団結させ、「法案ごとに」是々非々で立法に取り組む「多元的な国民議会」を呼びかけた。同氏は「われわれは異なる政治を行う必要がある。仏国民と投票結果のメッセージを受け止めたということだ」と述べた。

  各政党は決選投票で最大のチャンスを得ようと、激しい駆け引きをしている。マクロン氏は辞任の意向はないとしており、大統領の立場が危ぶまれているわけではない。とはいえ、決選投票の結果次第では、マクロン氏はルペン氏の勢力と共存するか、基本的に膠着(こうちゃく)状態の議会に対処するかを選ばなければならない。

  RNが絶対多数を占めれば、バルデラ氏が首相に指名され、同党は法案を容易に可決できるようになる。歴史的に、仏政界主流派は、極右を政権から締め出すために結束してきた。

  RNとその同盟勢力が過半数を占めるには、289議席が必要となる。極右勢力の候補は577選挙区中485選挙区で勝利または決選投票に進出した。仏ラジオ局フランス・アンフォによると、極右勢力の候補者はこのうち297の選挙区で、得票率1位または当選を決めた。

  TF1に出演した新人民戦線のリーダー、ラファエル・グリュックスマン氏は、党派を超えた政権を支持するかどうかについては明言を避けた。ただ、アタル氏の呼びかけには賛同し、RNの絶対多数獲得阻止に向け全力を尽くすよう有権者と政治家に求めた。グリュックスマン氏は今回の選挙を、フランス人が極右政権を望むかどうかの「国民投票」だと表現した。

  TF1は、極右勢力への合流をめぐって分裂している中道右派・共和党のグザビエ・ベルトラン氏にもインタビューした。ベルトラン氏は極右との取引に反対を繰り返す一方、マクロン、アタル両氏への支持も固辞している。

  マクロン氏の与党「再生(RE)」は、「共和国の価値観」を尊重する政党が極右勢力に勝利するのを支援するため、第1回で3位だった候補者の立候補を取り下げるとしている。ただ、新人民戦線連合の一角である急進左派「不屈のフランス」は、欧州連合(EU)の予算規則を無視するような支出を提案しており、投資家を不安に陥れる可能性がある。

  このため、極左が有利になるような選挙区で与党勢力の候補が撤退するかはわからない。アタル氏は1日、ケースバイケースで検討すると述べた。

  ルメール仏経済・財務相は2日、仏紙フィガロとのインタビューで、極左政党である不屈のフランスを支持しないとあらためて表明。「不屈のフランスの価値観でRNと闘うことはしない」と述べた。

  ルペン氏は2日のラジオインタビューで、われわれの「政権は完全で、有能なものになるだろう」と述べた。「政権はRNの人々、第1ラウンドの選挙戦に私たちとともに参加した人々で構成されるだろう」と語った。

原題:French Parties Move to Block Le Pen in Final Election Stretch(抜粋)

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