(ブルームバーグ): 米大統領選挙でドナルド・トランプ氏勝利の可能性が高まっているため、米国債イールドカーブのスティープ化を見込む取引は有望だとの見方を、モルガン・スタンレーが示した。そのようなシナリオでは成長が鈍化しインフレが加速する可能性が高いと予測した。
米大統領選の討論会でトランプ氏が再選される可能性が高まったため、前大統領の移民政策や関税政策への注目が強まるだろうと、モルガン・スタンレーのストラテジストが6月29日付のリポートで解説した。
債券トレーダーもイールドカーブのスティープ化を見込んでおり、米2年債に対する10年債の利回りディスカウントは先週、昨年1月以来の大幅縮小となった。
マシュー・ホーンバック、グニート・ディングラ両氏を含むらモルガン・スタンレーのストラテジストは「トランプ前大統領がバイデン大統領に勝利する確率は、討論会以降明らかに相対的に変化している」とリポートに記述。「トランプ氏勝利の確率の急激な上昇は、カーブスティープナー取引を魅力的なものにするきっかけになるかもしれない」と論じた。
2カ月連続の月間上昇を記録した米国債市場にとって、ポジション調整は見通しを複雑にするかもしれない。トランプ氏は不法移民を強制送還すると宣言し、対中関税引き上げの姿勢を強めているため、トレーダーは成長鈍化とインフレ加速のリスクを織り込んでいる。
ストラテジストは「すでに成長が鈍化している経済状況下で、移民政策や関税政策が変更される可能性が高まっている」ことから、市場は利下げを織り込みやすくなると指摘。同時に「財政赤字がますます注目される中で共和党が政権を奪取する可能性が高まれば、長期金利の上昇圧力が強まるだろう」と分析した。
ストラテジストは米国債の2年物・20年物のスティープナー取引を追加することを推奨した。
モルガン・スタンレーのアナリストは先月のプレゼンテーションで、関税引き上げと移民の強制送還はいずれも米国の経済成長にとってマイナスになるだろうと指摘。経済への打撃は、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げを促し、短期利回りを低下させるだろうとの見通しを示した。
インフレが加速すればクーポン支払いの価値が目減りするため、長期債にとって悪いニュースだ。
大統領選討論会の結果を受けて、アナリストからはトランプ氏勝利にどう備えるべきかという声が相次いだ。バークレイズは米国債市場でインフレヘッジを購入するよう投資家に勧めている。
野村証券のシニア金利ストラテジスト、小清水直和氏は、トランプ政権は財政拡大とドル安を好むとみている。これは、ハト派の米連邦準備制度理事会(FRB)議長の選択と共に、米国債イールドカーブのスティープ化につながるだろう。
同氏は7月1日のリポートで、トランプ政権が誕生した場合、国債増発の可能性が高まると予想。インフレが再燃して米政策金利が高止まりした場合、利払いの増加は財政赤字の拡大につながると分析した。
原題:Trump Ascendancy Has Morgan Stanley Team Touting Steeper Curve(抜粋)
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