(ブルームバーグ): 日本銀行元理事でNTTデータ経営研究所会長の宮野谷篤氏は、日銀が今月末の金融政策決定会合で決める国債買い入れの減額計画について、金融市場調節への影響に考慮し、月間の購入額は現在の6兆円程度から2兆-3兆円への縮小が下限になる可能性があるとの見解を示した。

  宮野谷氏は6月28日のインタビューで、2013年4月の大規模緩和導入後の日本経済の成長を踏まえれば、月間の買い入れ額は2兆-3兆円が「長期金利に影響を及ぼさず、自然体で金融市場調節を行うための目線になると思う」と語った。大規模緩和前は金融緩和目的以外に成長通貨の供給として月間1.8兆円を購入していた。

  減額の下限に達するまでのペースに関しては「急にそこまで減額はできない。時間をかけて減らしていくことになる」と指摘。金融機関は金利を上げてほしい一方で急激な上昇は困るので、指定した利回りで無制限に国債を買い入れる指し値オペを「止めないでほしいという人は多いだろう」とも述べ、柔軟性も考慮されるとみる。

  宮野谷氏はゼロ金利政策や量的緩和導入時に金融市場局の市場調節課長として、金融調節の指揮を執った。長期国債の買い入れオペレーションは低コストで安定的に電力を供給できる「ベースロード電源のようなもの」であり、円滑な金融市場調節に不可欠だと強調した。

  日銀は30、31日の会合で今後1-2年程度の具体的な国債買い入れの減額計画を決める方針。ブルームバーグが6月会合後に実施した調査では、月間5兆円程度に減額した上で、段階的に縮小して2年後に3兆円程度になるとの予想が中心で、宮野谷氏の見方もおおむね市場予想に沿っている。

  足元の円安加速も背景に、市場では今月会合で日銀が追加利上げに踏み切るとの観測も浮上しているが、宮野谷氏は「難しい判断だ」と明言を避けた。一方で国債買い入れの減額については「過剰に保有していることは明らか」と指摘。流動性があり、価格発見機能などが働く国債市場の維持に向け、「金融市場調節に支障を来さない範囲で、自然体の分だけ買えばいい」との認識を示した。

金融システム

  金融機構局長や同局担当の理事も務め、金融システムにも精通する宮野谷氏は、日銀の金融政策の正常化で金利が復活しつつあることに関し、長めの金利の上昇で長短スプレッドが拡大していることは金融機関全体として収益面の押し上げ効果は大きいと指摘。今後のさらなる利上げによって短期プライムレートが上昇すれば、地域金融機関にもプラスの影響が本格的に及ぶとみる。

  もっとも、世の中が物価上昇と賃上げの好循環にかじを切っているにもかかわらず、金融界は相変わらず低金利競争を続けているように見えるという。金利のある世界に向け、「リスクやコストに見合った貸出金利を設定していかないと金融システムにいい影響は出ない」と指摘。現在の企業の課題は金融面よりも「金利以外のサービス力を発揮していくことが​企業にも地域にも求められている」と語った。

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