(ブルームバーグ): 全国の物価の先行指標となる6月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前月から伸びが拡大した。日本銀行が目標とする2%台を3カ月ぶりに回復したが、追加利上げに向けてはなお見極めが必要との見方が出ている。
総務省の28日の発表によると、コアCPIは前年同月比2.1%上昇した。市場予想は2.0%上昇だった。エネルギーは7.5%上昇。政府による電気・ガス価格激変緩和対策事業の補助額が半分程度になったことが影響した。生鮮食品を除く食料は3.0%上昇と、11カ月連続でプラス幅が縮小した。
インフレ継続と円安加速を背景に、市場では日銀が7月30、31日に開く次回の金融政策決定会合で、国債買い入れの減額計画と同時に追加利上げに踏み切るとの思惑が浮上。植田和男総裁は、データ次第で7月会合での利上げも「十分あり得る」と発言している。日銀の対応に注目が集まる中、市場の思惑は引き続き交錯しそうだ。
明治安田総合研究所の小玉祐一フェローチーフエコノミストは、日銀が7月に利上げに動くかどうかは為替次第で、「今ぐらいの状況で推移するなら、7月に動く可能性は非常に高い」と予想。一方、賃金上昇に伴う物価上昇圧力が強まっているとは言えず、「賃金と物価の好循環が広まったかどうかはっきり見通せない状況が続いている」と指摘した。
賃金動向を反映しやすいサービス価格は0.9%上昇と前月からプラス幅は拡大。宿泊料や外食などが押し上げに寄与した。今年の春闘で平均賃上げ率が33年ぶりに5%を超える中、賃上げコストを価格に転嫁する動きの広がりが注目されている。
みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介主席エコノミストは、日銀が注視するサービス価格などを見る限り、利上げをサポートする材料としては乏しいとの見方を示した。その上で、日銀としては「もう少しデータを見たいだろう」と語った。
ブルームバーグの最新のエコノミスト調査によると、43人のエコノミストのうち33%が7月会合での利上げを予想。一方、44%は国債減額計画の決定によって7月の利上げの可能性は低下したとの見方を示した。
生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは1.8%上昇と、前月の1.7%上昇から伸びが拡大した。市場予想は1.7%上昇だった。
総務省の説明
- 政府による電気・ガス価格激変緩和対策事業の縮小がエネルギーを押し上げ。コアに対する押し下げ寄与は前月の0.47ポイントから0.24ポイントに
- 電気代は昨年6月に東京電力による家庭向け電気料金の値上げが行われた反動もあり、全体では前月対比で押し下げ寄与となった
- 前月から押し上げに寄与した家庭用耐久財は需要拡大を反映したルームエアコンの値上げ、宿泊料は昨年に全国旅行支援を再開する自治体が出た反動
- 生鮮食品を除く食料は特に値下げが目立った品目があるわけではない
--取材協力:氏兼敬子、横山恵利香.
(詳細とエコノミストコメント、チャートを追加して更新します)
More stories like this are available on bloomberg.com
©2024 Bloomberg L.P.
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。