「自分がいなくなっても会社に成長してほしい」
大阪の建設会社が次世代に事業を引き継ぐために、最新技術を導入しました。
■理念やノウハウを継承するための「AI」活用
【進和建設 西田芳明会長】「どういう心境ですか?」
【AI社長】「長年やってきたことが一つの区切りを迎えたという感じやね」
質問をした人と答えた人は…同一人物!?
画面の中にいるのは、日本初となる“社長業を引き継いだ”AIクローンです。
一体なぜ、クローンを作ったのでしょうか?
堺市の建設会社「進和建設」の西田芳明会長(72歳)は先日、37年勤めた社長職を退きました。
手がけてきた賃貸マンション建設では、動物園に見立てて現場を装飾するなど、地域に愛されることをモットーに事業を行ってきました。
会社を長年引っ張ってきた西田会長の悩みは、こういった経営理念や独自のノウハウをどう引き継ぐかです。
そこで目を付けたのが「AIクローン」でした。
【進和建設 西田芳明会長】「経営っていうのは売り上げ・利益を伸ばすことよりも、つなぐこと、伝えていくことが大事だと思っています。最初はこういうのに疎いから分からなかった。でも説明を聞いているうちに、俺が合宿したり本を残すのと同じだなと思った。ただ、本は質問できないから、(AIクローンは)質問できるから。そういう意味では、いい事業継承になっていくのではないかなと」
■若手社員も「AI社長」なら気軽に話せる?
著書や、これまでの講演の音声データなどを取り込むことで会長の考え方を学習したAIは、たった2カ月で一問一答ができるレベルに到達しています。
社歴28年のベテラン社員は、AI社長にこんな相談をしていました。
【28年目の社員(部長)】「今後、どのような商品開発をすれば良いですか?」
【AI社長】「商品開発について、市場のニーズをしっかり把握することが大事やね。これからもお客さまに喜ばれる商品を提供できるよう、がんばっていこうね」
【28年目の社員(部長)】「すごく優しい会長になっております」
さらに…。
【2年目の社員】「現在、2年目の社員です。今後、会社で活躍していくためにどのような成長をしていけばよろしいですか?」
【AI社長】「2年目の社員として進和建設工業で活躍するためには、いくつかのポイントを押さえて成長していくことが大事やね」
若手社員でもAIであれば気軽に社長に質問できます。
【2年目の社員】「会長が退いたあとも、考え方や意志が受け継がれるのは、これから長い期間働いていく社員にとってもすごくありがたい存在」
開発を担うのは、東京のベンチャー企業です。担当者は、この取り組みは社会課題解決のヒントになると期待を寄せます。
【オルツ事業本部 小村淳己さん】「中小企業の技術力・ノウハウは(日本経済にとって)強い要素だと思っていて、今までだと全て埋もれてなくなる可能性があったものを残せるのは、技術・ノウハウを永久化していく意味でも社会的な意義がある」
今はまだ初期段階ですが、今後は図面を見てすぐに億単位の見積もりを出せる西田会長の熟練の技なども、AIクローンに学ばせたいということです。
【進和建設 西田芳明会長】「色んな人にお世話になった。学ばせていただいた。このまま死んだら、泥棒やで。その次の代に伝えていくこと自体が俺の役目ではないかと思う。それをAIの中に叩きこんでいきたいなと」
培ったノウハウの継承にAIを活用するという新しい取り組み。こういった技術によって、よりAIへの関心が高まり、導入のハードルが下がるかもしれません。
また、中小企業などで後継者不足が問題となっている中、AIが活路となることも期待されます。
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