先日、ベビーミルク支援活動を精力的に続ける「共育ステーションつむぎ」の代表理事と話す機会があった。「つむぎ」は、赤ちゃんが生まれた生活困窮世帯にベビーミルクやオムツを届ける活動をしている団体で「ベビーの命と健康を守りたい」との信念を持つ。

 つむぎの代表理事が語ったのはこんな内容だ。

 14年前、那覇市母子寡婦福祉会でひとり親世帯の女性たちに会った。彼女らの多くはダブルワークで授乳時間を十分にとれず、粉ミルクを利用していた。ただ給料日前のわずかな期間は家計を切り詰めるため、ミルクを薄めて飲ませることもあるとのことだった。

 そうした家庭で育った子どもの多くが病弱で、何らかの疾患を抱えていた。一般家庭とは明らかに違う特徴に気づき、ミルクを薄めることには弊害があるのではないかと考えたそうだ。

 代表理事が薬剤師や小児科医、看護師、相談支援団体に確認したところ、内臓へのダメージや脳への栄養不良などの悪影響が確かにあるとのことだった。

 小児科医の話では、胎児や乳幼児期の栄養不良を原因とする内臓疾患について、論文や臨床データも示されているという。

 厚生労働省のサポートとして、生活保護受給者、もしくは住民税非課税世帯を支援する「地域母子保健事業」があるが、生後4カ月以降の乳児が対象だ。

 しかし、生後3カ月までの乳児への支援も同様に必要である。栄養不良となる前のこの時期の支援が、その後の健康状態にも大きく影響するからだ。「つむぎ」はこうした乳児期の家庭を支援するとともに、助産師や保健師からの公的なミルク支援ができる早期の体制作りを訴えている。

 こうした話に、同じ子を持つ親として、胸が締め付けられる思いだった。福祉からこぼれ落ちた世帯を地域で支援できないか-。そんな思いから、照屋食品は規格外の島豆腐を、「つむぎ」をはじめ社会福祉協議会やこども食堂、母子支援センターに無償提供している。今後も、自分たちにできる支援を続けていくつもりだ。

(照屋食品社長)

次回は糸数真由美氏(沖縄振興開発金融公庫調査部金融経済調査課長)です。

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