去年、大阪湾に迷い込んで死んだクジラの処理費が、当初の試算の倍以上に膨らんだ問題。大阪市の「入札等監視委員会」が7日に発表した調査結果で、「処理費用の積算根拠が不明瞭だ」と指摘しました。

【大阪市契約管財局制度課長】「不適正と言わざるを得ません」

入札や契約が適正か確認する大阪市の「入札等監視委員会」が7日、調査結果を発表しました。発表したのは、去年大阪湾で死んだクジラの処理費用をめぐる契約手続きについて。

2023年1月、大阪の淀川河口付近で見つかったマッコウクジラ。「淀ちゃん」とも呼ばれ、注目されましたが、その後に死んだため、当時の松井大阪市長は海底に沈めることを決めました。

当初、その処理費用は3800万円ほどと試算されていましたが、実際には倍以上の約8000万円で契約されました。

この契約をめぐっては、処理業者との協議で、直接の担当ではない大阪市の課長が、担当の課長に対し、業者の意向に沿って金額を上げるよう強く進言していました。

【処理業者の担当者】「ブラックボックスにできるのは『クジラの清掃』なので、うまく8000万(円)台へもっていったらいいんちゃうの」

【担当外の大阪港湾局課長(当時)】「『(金を)積まんことには話にならん』ということやね。8000万円を超える数字を出さないと」

大阪港湾局は最終的に業者側の見積りをもとに金額を引き上げることになったのです。

他にも、当時の人事・港湾再編担当課長が「慰労の意を込めた」として業者に日本酒を贈ったり、増額を進言した課長が業者と会食していたことも分かっています。

また、大阪市監査委員は業者との契約が違法だったとする市民からの住民監査請求を受けて監査を実施。その結果、「8000万円という金額ありきで交渉が進められてきたと、強く疑念を抱かざるを得ない」などとして、第三者による再調査を行うよう、横山市長に勧告しました。

■会食は「市民の疑惑と不信を招く」、価格交渉は「不適正と言わざるを得ない」

大阪市の「入札等監視委員会」も、契約手続きが適正だったかについて、担当部局に対して調査をしていましたが、7日、調査報告を発表。

業者と会食をすることは、「市のマニュアルでは禁止事項で看過できず、酒類を提供することも、市民の疑惑と不信を招く行為である」と指摘しました。

契約金額については、「年度内での契約を急ぐあまり、業者の意向に沿う積算基準を採用するに至ったとの疑念を抱かざるを得ない」などとしています。

【大阪市契約管財局 吉内健制度課長】「事業者との価格交渉する最終的な競技の場において、あたかも契約相手方に立って、説明責任を意識した積算議論よりも、合意できる金額に近づけるための議論に終始していることが確認されます。これらの行為は市民の疑惑や不信を招く行為であることは明らかであり、職責からも不適正と言わざるを得ません」

■「8000万円」に合わせた根拠を考えるよう指示があった

さらに7日、新たな事実も。業者が示す8000万円という金額で契約が進められようとする中、その金額に合わせた根拠を考え出すよう指示されていたことも分かりました。

【大阪港湾局部長】「今(事業者と)話している中で8000(万円)ないと落ち着けへんっていうことを言い出してるんですけど」

【大阪港湾局長】「8000(万円)にしようと思ったらどうしたらええか、そのアイデアをくれ、その根拠の中でどうしたら8000(万円)になるんやっていうのを」

【大阪港湾局部長】「そういうやりとりをして決めていくっていう趣旨でいいですね」

【大阪港湾局長】「そうや」

金額の決定方法は適正だったのか。

大阪市の横山市長はこれまで、「事業費に関しては、合理的な根拠を持って精査して意思決定したと(港湾局から)聞いている」と議会で答弁してきましたが、7日もその姿勢は崩しませんでした…

【大阪市 横山英幸市長】「それぞれの論点について、再発防止を徹底していきたい。引き続き調査が及んでいない疑義が残ると言われている点に関しては、外部監査専門委員の方で引き続き調査を委託していきたい」

大阪市は今後、問題の全貌を明らかにしたいとしています。

■入札等監視委員会はいくつもの問題点を指摘

入札等監視委員会が指摘した問題点をまとめます。
・業者への酒類提供
・契約金額交渉中に処理業者と会食
・担当出ない職員が業者と交渉→業者が希望する金額に?
・適正な予定価格を検討する資料不足
・港湾局長ではなく課長級が決裁
・随意契約を審議する資料が不十分
こういったことが挙げられています。

契約に関して不適切な部分があったと認められました。

【ジャーナリスト 浜田敬子さん】「2つ問題があると思っています。1つは金額が適正だったのか、もう1つはこの業者を選んだことが適正だったのか。この2つが絡まりあっていると思います。本来であればこの金額の事業は競争入札をすべきで、何社かで競争してもらって適正な事業者を選ぶのが本来です。今回の場合、緊急性が高いということで1社にするというので、やはり他の自治体の事例とか、少なくとも相見積もりを取るぐらいしなければいけなかった。さらに今回、業者との関係性が分かってきて、金額は相手の言いなりになったんじゃないかと疑念を持たれても仕方がないと思います」

■死んだクジラ13頭の処理費用が6000万円だった事例も

なぜ8000万円まで金額が上がっていったのか。現段階では分かっていないということです。

【関西テレビ 神崎報道デスク】「なんで8000万円になったのか。他の事例ということで、20年ぐらい前の話なので同一には比べられないかもしれませんが、鹿児島県の事例で13頭のマッコウクジラが死んだことがありました。1頭は埋設処分で、残りの12頭を淀ちゃんと同じように海洋投棄しました。その時の費用が13頭で約6000万円ですんでいたそうです。体長はほぼ同じぐらいだったということです。13頭で6000万円ですんでいることを考えたら、1頭で8000万円はやはり高過ぎるのではないかと思います」

大阪市の職員と業者のやりとりは適正なものだったのでしょうか。

【ジャーナリスト 浜田敬子さん】「民間企業であれば業務上横領みたいな形になるわけです。掛からなくてもいいお金を無駄に使ってしまった。しかも自分の知り合いの業者に頼んだ。食事なんかもしていて、癒着があったとすれば、これは市民の税金をこういうふうに使って本当にいいのか。大阪市民の方はもっと怒ってください」

今後、第三者委員会が設置されます。そこで厳正な調査をしっかりとしてほしいと思います。

(関西テレビ「newsランナー」 2024年6月7日放送)

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