パチンコなどのほか、競馬や競輪などの公営競技があり、「ギャンブル大国」ともいわれる日本。「ギャンブル依存症」の危険は身近にある。そんな中、ボートレース場を運営する滋賀県が「依存症」の対策に乗り出した。

【動画】日本は「ギャンブル大国」 「やることないからパチンコ屋に行く」ギャンブル依存症の当事者の告白

■ギャンブル依存症は320万人 当事者の1人「きっかけは、やることがないからパチンコへ行く」

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大谷翔平選手の元通訳の水原一平被告の問題でも注目されるギャンブル依存症。生涯で依存症が疑われる20歳以上の人は、全国で約320万人いるとされている。

ギャンブル依存症の当事者 Aさん:ギャンブルでしか出ない“気持ちよさ”や“高揚感”がどんどん増えていったので、新しいものへ新しいものへはまった。

ギャンブル依存症のAさん(26)は、大学生のころパチンコを始め、徐々に競艇やオンラインカジノにもはまり、たったの10分で、40万円負けたこともあった。

ギャンブル依存症の当事者 Aさん:(頻度が)増えた原因は、免許合宿に行って、実家でないところで1人で1カ月生活した。やることないからパチンコ屋に行くのが、週3・4回になって、毎日になっていった。(借金は)知人に150万ぐらい、消費者金融が250万、合わせて400万。どうやって返そうと思った時に、コツコツ返そうじゃなくて、(借金が)40万だったら、20万を倍にしようという考え方で(ギャンブルを)やっちゃう」 ふとしたきっかけでやり始めたギャンブルが、日常生活で欠かせないものに。

借金を返すために犯罪に手を染めてしまいそうになったこともあったという。

ギャンブル依存症の当事者 Aさん:支払いができなくなって、ネットで探したらあって。闇バイトみたいなのをやろうと思ったり、(やる前にだまされて)失敗したみたいなのはありましたね。

ギャンブルで生活が破綻し犯罪につながるケースも多く、支援団体によると、依存症の人たちの約3割が犯罪に手を染めた経験があるということだ。

■滋賀県のボートレース場は過去最高売り上げ 一方で公営ギャンブルへの依存症の相談が増加

また最近、支援団体への相談が増えているのが、競馬や競艇といった公営のギャンブルの依存症だ。

滋賀県大津市にある「ボートレースびわこ」。全国でただ一つの県営の競艇場。レースがある日には多くの人が訪れる。

訪れていた人:お小遣いの範囲で、ちょこちょこ楽しもうかな。

訪れていた人:月にほとんど来てる。スリルやな。(スロットルレバーを)握ってくれたら、『よっしゃー』みたいな、そんな感覚やな。

滋賀県によると、昨年度の売り上げは735億円と過去最高に。YouTubeで全てのレースを中継したり、AIによる着順予想を無料で公開したり、またインターネットで舟券を購入できることなど、気軽に楽しめるようになったことが理由とみられる。売り上げの一部は、「びわ湖ホール」の改修費や、環境学習船「うみのこ」の事業費に活用されていて、今では県を支える大きな財源となっている。

■依存症を未然に防ぐための研究がスタート

そんな中…
記者リポート:朝から多くの来場者でにぎわう滋賀県のボートレース場ですが、ここで依存症を未然に防ぐための研究がスタートします。

滋賀県によせられる、ギャンブル依存症関連の相談件数は年々増えている。そこで滋賀県は、今年度から依存症が疑われる人の実態把握を始めることに。

その仕組みは、オンラインで舟券を買うと、買った人の年齢や金額、購入の頻度などがデータ化される。滋賀県はこのデータを分析して、依存症になる手前で気づくことなど、効果的な対策を検討するという。

滋賀県 三日月大造知事:ボートレースの収入が好調、この好調の陰には依存症、生活破綻が起こっていないのか懸念していた。対策を同時に県としてやっていく責任がある。

この取り組みについて競艇場を訪れていた人は…

訪れていた人:めっちゃいいことやと思います。一歩間違えたら、どつぼにはまる可能性はあると思うので。

訪れていた人:友人でもかなりの額を賭けたり、結構負けているのを隣で見ていたりするので、ある適度ストップがきかない人に、対策をしてあげるのは必要なこと。

しかし、対策は一筋縄ではいかない現実もある。

■1度はギャンブル依存から抜け出しても、再び「ギャンブルが身近過ぎるのはよくない」

ギャンブル依存症に陥ったAさんは、ことし3月から支援団体の回復プログラムを受け、社会への復帰を目指している。

支援団体スタッフ:ここに来ているみんなも、逆境や困難があって、ここに来た。
ギャンブル依存症の当事者 Aさん:借金というか、お金のことを考えていた。
支援団体スタッフ:借金がバレたときは、どうでした?
ギャンブル依存症の当事者 Aさん:いずれバレるものと思ったので、身構えているというか。

実はAさんがこの団体を頼ったのは、今回が初めてではない。5年前に回復プログラムを約1年間受けたが、終了後、再びギャンブルにはまった。

ギャンブル依存症の当事者 Aさん:パチンコは30分歩けば1店舗あったり、オンラインカジノはインスタグラムやXの広告に出てきたりするので、身近すぎるのもよくないのかな。(当時は)大げさにいうと、捕まったりとか、誰かが僕のギャンブルが原因で死んだりとか、よっぽどのショックがないとやめられるものではない。

■スマホでもギャンブル 手軽になって支援は難しく

この団体で働く西尾さんも依存症の当事者で20年以上、ギャンブルから抜け出せなかった。スマートフォンがあれば、いつでも、どこでもギャンブルができるなど、手軽になったからこそ支援の難しさも感じている。

ワンネス財団 西尾典臣さん:オンラインでやる場合は、賭けられるお金があれば、24時間いつでもどこでも賭けられる状況があるので、家族が発見するのも遅くなる。自分では気付きにくいので、周りの支援が必要。

こうした状況に専門家は「強制的にギャンブルをやめさせる対策がまず必要だ」と指摘する。

静岡大学 鳥畑与一名誉教授:危険な状況と判断された場合には、アクセスを停止する、口座を凍結する、スマホで賭け行為をできない状態にしていくことは可能。

増加するギャンブル依存症、未然に防ぐための対策が急がれる。

■「公営ギャンブルの取り締りは、自治体ではない別の機関がやる方が健全」

オンラインで、いまは24時間、いつでもどこでも、ギャンブルにアクセスできてしまうので、対策もなかなか難しい。やめようと思っても、まさに「やめられない状況」に陥ってしまうという点が怖い所だ。

関西テレビ 加藤さゆり報道デスク:ギャンブル依存症は、本当に病気なんです。誰もがなり得るものだとみんなが留意して、周りが支えなきゃいけないと思いますが、一方で公営ギャンブルですので、収益は県に入ります。そうすると、そこが取り締まるというのも、またちょっとちぐはぐなんです。鳥畑教授も指摘していますが、本来であれば別の機関が取り締まりや、調査をした方がより健全です。

どこかで歯止めをかける、その歯止めのラインの引き方も、きちんと議論する必要がありそうだ。

(関西テレビ「newsランナー」2024年5月15日放送)

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