低価格販売が強みの中国の電子商取引(EC)大手、拼多多(ピンドゥオドゥオ)の快進撃が止まらない。同社が3月20日に発表した2023年10~12月期の決算によれば、同四半期の売上高は888億8100万元(約1兆8558億円)と前年同期の2.2倍以上に急増した。
拼多多のライバルの業績と比較すると、同社の突出ぶりがさらに鮮明になる。中国のEC最大手、阿里巴巴集団(アリババ)の国内EC部門である淘宝天猫(タオバオ・Tモール)コマース・グループは、2023年10~12月期の売上高の伸び率がわずか2%、同じくEC大手の京東集団(JDドットコム)は同3.4%にとどまった。
売上高だけでなく、利益も急増している。2023年10~12月期の拼多多の純利益は、ストックオプションや投資損益などを控除・調整した非アメリカ会計基準(非GAAP)ベースで254億7700万元(約5319億円)と、前年同期から倍増した。
四半期毎に成長率アップ
2023年の四半期決算を振り返ると、拼多多の売上高は年間を通じて成長が加速し続けたことがわかる。四半期売上高の前年同期比の伸び率は1~3月期が58%、4~6月期が66%、7~9月期が94%、10~12月期が123%だった。
その結果、同社が10~12月期決算と同時に発表した2023年の通期決算では、年間売上高は前年比90%増の2476億3900万元(約5兆1705億円)に達した。非GAAPベースの年間純利益は同72%増の678億9900万元(約1兆4177億円)に上り、目を見張る増収増益を成し遂げた。
「2023年の売上拡大を支えたのは、わが社の効果的なセールスプロモーションと、中国の個人消費の全体的な回復だ。中国の個人消費は『深さ』と『広さ』と『強靱さ』を兼ね備えている。われわれは中国の個人消費の先行きに自信を持っている」
拼多多の共同CEO(最高経営責任者)を務める趙佳臻(ちょうかしん)氏は、決算説明会でそうコメントした。
ライバルのアリババや京東の業績が伸び悩むなか、拼多多はなぜ圧倒的なパフォーマンスを達成できたのか。
「近年、中国の消費者の間では『消費のアップグレード』に対する欲求が高まっている。それは、より多くのものを買うことでも、(我慢して)節約することでもない。より経済的かつ便利な消費方法を(賢く)選ぶことで、生活のクオリティを高めることだ」
趙CEOはそう述べ、消費者ニーズの変化にマッチした経営戦略を徹底したことが好業績につながったと分析した。
さらに趙CEOは、中国のライバルが低価格路線にこぞってシフトしていることに関して、「EC業界の競争の本質は、消費者の多岐にわたる需要をいかに理解し、満足させるかにある」と指摘。拼多多の競争優位の維持に自信を示した。
「Temuはまだ立ち上げ段階」
拼多多の事業のなかで、国内ECの躍進と並んで注目を集めているのが、急ピッチで拡大している海外市場向け越境EC「Temu(ティームー)」だ。2022年9月の事業開始からわずか1年半で、すでに50カ国・地域に進出を果たした。
拼多多が運営する越境EC「Temu」は、圧倒的な低価格で進出先の国・地域に急速に浸透している(写真はTemuのアメリカ向けウェブサイトより)「Temuはまだ立ち上げ段階にある。これから多くの環境変化や困難に直面するだろうが、新たなテクノロジーとビジネスモデルを積極的に模索していきたい」
拼多多の董事長(会長に相当)と共同CEOを兼務する陳磊氏は、Temuの現状について決算説明会でそう述べるにとどめ、詳しいデータは開示しなかった。
本記事は「財新」の提供記事です。この連載の一覧はこちらなお、越境ECに対して指摘されている(出店者による海外の知的財産権侵害などの)法的課題に関して、陳氏は次のようにコメントし、プラットフォーマーとして対応を強化する姿勢を示した。
「わが社は2023年にコンプライアンス委員会を設立し、社内の法令順守の状況とプロセスを改善し続けるとともに、(Temuが進出した)各国の政府の所管部門とコミュニケーションおよび協力を深めてきた。今後は越境ECの業界内で最高水準のコンプライアンス体制を目指す」
(財新記者:包雲紅)
※原文の配信は3月20日
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