国賓としてアメリカを訪問し、日米の蜜月ぶりをアピールした岸田総理。今回の総理訪米には、一体どんな意味があるのでしょうか?
■国賓で歓迎 アメリカの思惑は
満面の笑みで、大統領専用車「ビースト」に同乗し、親密さをアピールするバイデン大統領と岸田総理。
4月10日、訪米した岸田総理を迎えて、バイデン大統領主催で開かれた公式晩餐会では…
岸田総理(4月10日)「太平洋は日本と米国を隔てているのではなく、むしろ米国と日本を結びつけている。私はこのセリフが好きで何度も使っている。スピーチ原稿にこのフレーズが登場するたびに、スタッフが削除しようとしたほどです」
ジョークを交え会場を沸かせた岸田総理。さらにアメリカのSFドラマ
「スタートレック」の台詞を引用し、日米の蜜月ぶりをアピールしました。
岸田総理 「日本とアメリカはかつてなく結束しています。“前人未到の地へ、果敢に挑もう”-」
バイデン大統領 「同じ未来へ 乾杯!」
■日本の防衛政策の転換
今回、国賓待遇で迎えられた岸田総理。歓待の背景には、日本の防衛政策の大きな転換がありました。アメリカ議会での演説でも…
岸田総理・議会演説(4月11日)「おととし、日本は2027年度までに防衛予算をGDPの2% に達するよう相当な増額を行い、反撃能力を保有し、サイバーセキュリティーを向上させることを発表しました」
防衛費を対GDP比2%へ倍増するほか、“反撃能力”の保有をアピールしたのです。
■日米同盟 中国を見据えて
他国の領域を攻撃できる「反撃能力」。それを見据え、今後、中国本土にまで達する射程の長いミサイルの配備が予定されています。
こうした軍備の強化で、アメリカ軍が攻撃の「矛」、日本が防御の「盾」
という、これまでの役割が大きく変わることになる中、バイデン大統領は日本の姿勢を高く評価しました。
バイデン大統領(4月10日)「岸田総理の勇気あるリーダーシップのおかげだ」「日米同盟が発足して以来、最も重要なアップグレードだ」
また日米首脳会談では、自衛隊が一元的に部隊を運用する統合作戦司令部を創設することに伴い、自衛隊と在日アメリカ軍、双方の指揮統制の枠組みを強化し、連携することで合意しました。
こうした岸田総理の姿勢に、藤原帰一さんは…
藤原帰一・順天堂大学特任教授 「ウクライナがロシアに侵略された、同じ運命を東アジアも被ることになる
かもしれないと岸田総理は言っているわけですが、武力による抑止力の
強化、同盟の強化によって本当に戦争を防げるかどうかは分からない。
中国から見た場合、一番近い中国にとっての脅威はアメリカと同盟を
組んでいる日本。日本は戦争の最前線になるんです」
■中国包囲網
こうした中、7日には、フィリピン西部パラワン島沖の南シナ海上で、日本、アメリカ、フィリピン、オーストラリア4か国による、初めての共同訓練を実施。
南シナ海で、領有権を争う中国とフィリピンの間の緊張が高まる中、4か国が結束することで中国包囲網を敷く狙いがあるとみられます。
■国賓としての訪米で
今回の訪米で、日本の防衛力増強と、これまでにも増して緊密なアメリカとの連携を訴えた岸田総理。
振り返れば、国賓としての総理訪米は、日本の大きな転機となることが、しばしばありました。
国賓として招かれ、エルビス・プレスリー邸を訪問し、ブッシュ大統領との親密さをアピールした当時の小泉総理。
小泉氏はアメリカのイラク攻撃を支持し、自衛隊のイラク派遣を決めるなどし、ブッシュ氏と蜜月関係を築いてきました。2006年の首脳会談では、在日アメリカ軍の再編などで合意しています。
また2015年に国賓として招かれた当時の安倍総理は…
安倍総理・演説(2015年4月)「この法整備によって自衛隊と米軍の協力関係は強化され、日米同盟はより一層、堅固になります」
「集団的自衛権の行使容認」など、安全保障法制の整備を夏までに成立させると宣言。実際、2015年9月に成立に至っています。
■日本の役割
そして今回の訪米で、これまでにない日米の一体化をアピールした岸田総理。藤原さんは、日米同盟の重要性、抑止力強化の必要性は認めつつも、「日本の役割」についてこう語ります。
藤原帰一・順天堂大学特任教授 「日本はアメリカの同盟国の連携を強めるという政策に、積極的に、自発的に乗っているが、外交の政策がまるで見えていない。元々日米同盟と経済外交、二本立てだったのが、日米同盟だけになったら、対外政策が軍事だけになる。それは危険だと私は思う」
(「サンデーモーニング」2024年4月14日放送より)
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