共同通信が7日に出した、「『もしトラ』に不安凝縮」「米紙、日本で流行語と紹介」という見出しの記事を読んで、「不安になっているのは、俺たちじゃなくて君ら米国人だろうが」と一人で突っ込んでしまった。
これはもともと、米紙「ワシントン・ポスト(電子版)」が出した記事である。確かに、日本では「もしトラ」「ほぼトラ」「まじトラ」などの言葉がはやっている。
ポストの記事によると、米国がドナルド・トランプ前大統領の返り咲きで再び「自国第一主義」に傾けば同盟関係に不確実性が増すため、日本人が「ハラハラするのも無理はない」ということだ。
さらに、「中国や北朝鮮など差し迫った安全保障上の懸念に対するトランプ氏の型破りな姿勢に、日本の指導者や官僚たちは第2次トランプ政権が何をもたらすか心配している」という。
そうだろうか。
まず、日本人ははっきり言って、「もしトラ」「ほぼトラ」と軽い気持ちで、あるいは少しふざけて話題にしていると思う。欧州、特にドイツなどはトランプ氏の再登場を深刻に受け止めているので、「もしトラ」などとふざける人はいないだろう。
8年前のトランプ氏登場の際は、当時の安倍晋三首相が電光石火、ニューヨークのトランプタワーに乗り込み、「現職のオバマ大統領に失礼だ」という批判をものともせずトランプ氏と会談し、その後、長く続く蜜月関係を構築した。
トランプ氏は当初、「在日米軍の撤退」などとんでもないことを言っていたが、安倍氏の説得を受け入れた。欧州の首脳が安倍氏に「トランプ対策」を相談したのは有名だが、実は、中国の習近平国家主席でさえ、安倍氏に「どうやればトランプ氏とうまく付き合えるのか」と聞いてきたという。
つまり日本には、対トランプの「成功体験」があり、他国に比べてアドバンテージがある。
記事は、「日本は米国とのパイプ役を2022年に暗殺された安倍氏にもう頼れないという現実がある」と述べているが、もともとトランプタワー訪問の段取りをつけたのは外務省だ。
今回も外務省は、ジョー・バイデン大統領とトランプ氏の両にらみで、双方のチャンネルをキープしている。何しろ、前回のノウハウを持っているというのは強い。だから外務省は「もしトラ」を実はそんなに心配していない。
「もしトラ」に不安なのは米国自身であり、その中でも民主党政権のリベラルな政策を支持する人たち、あるいは「トランプ嫌い」な米国のメディアだろう。
来年1月、トランプ氏はホワイトハウスに帰ってくるかもしれない。その時に日本の首相が誰なのかは知らない(岸田さんのような気もする)が、8年前の安倍氏と同じように堂々と向き合えばよろしい。何も心配することはないのだ。(フジテレビ特別解説委員・平井文夫)
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