バイデン米大統領は12日、イスラエルが在シリアのイラン大使館を空爆したことを受けたイランの報復攻撃について「すぐにでもあり得る」との見方を示した。イラン側は強硬発言を繰り返しているほか、13日にはイスラエル企業が関係する商船を拿捕(だほ)しており、緊張が高まっている。
イランの報復を巡り、米CBSテレビは12日、米政府関係者の話として、イランや親イラン武装組織が100機以上の無人機やミサイル数十発を用いて、イスラエル領内の軍事施設を攻撃する恐れがあると報道。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルも11日、近く攻撃がある可能性を報じている。イランの最高指導者ハメネイ師は10日の演説で、在外公館への攻撃は「あたかも我々の領土に対する攻撃のようだ」と指摘し、イスラエルは「罰せられねばならないし、そうなるだろう」と述べた。
英海軍の関連機関などによると、ホルムズ海峡付近のアラブ首長国連邦(UAE)沖では13日、イスラエル企業と関係がある商船が拿捕された。イラン国営メディアは、イラン革命防衛隊が商船を接収したと報じており、イラン側による攻勢の一環とみられる。
各国も懸念を強めている。ロイター通信などによると、フランスやロシア、インドなどが自国民にイラン周辺への渡航を見合わせるように勧告。オランダは14日に在イラン大使館を一時閉鎖するほか、日本もイスラエル国内やイスラエルの関連施設付近で注意を払うよう呼びかけている。
ただ、イランとしても報復の規模を見極めるのは簡単ではない。イスラエルや米国との本格的な軍事衝突につながりかねないからだ。紛争拡大を招かずにイスラエルを抑止するだけの報復を加えるには、標的の選定や被害規模を緻密に計算する必要がある。欧米や中東諸国は紛争拡大を避けるよう働きかけており、こうした各国の動きも見極めている模様だ。
一方、イスラエルはイランからの報復に備え、米国と連携して警戒レベルを上げている。親イランのイスラム教シーア派組織ヒズボラが拠点を置くレバノンの国境付近では防空を担う予備役を呼び戻し、戦闘部隊の休暇を一時的に停止。4日には、商都テルアビブでGPS(全地球測位システム)の妨害措置を実施した。イランによるミサイル攻撃を防ぐ目的とみられる。
イスラエル軍のハレビ参謀総長は12日、「我々は戦争状態にあり、6カ月にわたり警戒態勢を敷いている。どのようなシナリオにも対応する準備はできている」と主張。また商船の拿捕について、軍広報官は13日、「イランは緊張を高める道を選んだ代償を払うだろう」と述べた。
イランとイスラエルはこれまで敵対関係が続いてきたが、昨年10月にイランが支援するイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が始まると、対立が激化。今月1日にシリアのイラン大使館が空爆され、イラン革命防衛隊の幹部ら13人が死亡したことで、緊張が一気に高まった。【ワシントン松井聡、カイロ金子淳、エルサレム松岡大地】
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