北朝鮮への制裁の実施状況を監視してきた国連の専門家パネル。ロシアの反対で活動停止に追い込まれ、核開発の加速も懸念されるなか、唯一の日本人委員は新たな監視機関の設置を訴えています。

北朝鮮 金星 国連大使
「我が国に対する国連制裁決議を認めたことはない」

国連の制裁は認めないと強調する北朝鮮の国連大使。発表した声明では。

北朝鮮 金星 国連大使
「アメリカと追従勢力が時代錯誤な敵視政策を追い求めるならば、より悲惨な敗北を迎える」

この“敵視政策”とは、北朝鮮への制裁の実施状況を調査してきた国連安全保障理事会の「専門家パネル」を指します。

専門家パネルは核兵器の開発を進める北朝鮮の監視を目的に設立されました。今年は「サイバー攻撃によりおよそ4500億円の資金を獲得し、核兵器開発などに充てている」などと警告。しかし…

「決議案は否決されました」

今年3月、専門家パネルの任期延長をめぐり、安保理常任理事国のロシアが拒否権を行使。パネルは先月末で事実上、廃止されました。

専門家パネルの唯一の日本人委員、須江秀司さんは。

北朝鮮制裁委員会専門家パネル 須江秀司 元委員
「大量破壊兵器を含めた安保理決議違反に関する事例がおそらく増えていくだろうということは直感的に感じますよね」

須江さんは安保理決議違反が疑われる北朝鮮の取引などを調査してきました。

ロシアの拒否権行使の背景には、ウクライナ侵攻に登場した北朝鮮製ミサイルの存在があるとみています。

北朝鮮制裁委員会専門家パネル 須江秀司 元委員
「北朝鮮からロシアへの砲弾輸送で裏付けを取る作業に着手した中で、ロシアの反発は非常に大きかったと感じます」

ミサイル不足などを北朝鮮の兵器で解決したいロシアと、ロシアの支援を得て核を含む兵器開発を進めたい北朝鮮の利害は一致しています。

日本政府関係者は…

日本の国連担当者
「拒否権行使はぎりぎりに決まったものではない。モスクワの判断だったのだろう」

ロシアは早い段階で拒否権の行使を決断していたとみています。

専門家パネルの廃止で北朝鮮は制裁逃れの経済活動などを加速させる恐れもありますが、一方で…

北朝鮮制裁委員会専門家パネル 須江秀司 元委員
「我々は外交官の方々が戦えるような情報を提供して援護射撃をするというのが役目だったと感じていますし、パネルが今後、新しく生まれ変わるならば、チャンスなのかなと感じています」

今回のピンチを実効性のある新たな枠組み作りに生かすべきだと訴える、須江さん。

日本はアメリカや韓国とともに国連安保理と切り離す形で新たな組織の立ち上げを検討していて、その具体化が急がれます。

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