中国の無人月面探査機「嫦娥6号」を搭載して発射エリアに設置された運搬ロケット「長征5号遥8」=中国・海南省で4月27日、cnsphoto・ロイター

 中国国営新華社通信によると、中国は3日、無人月面探査機「嫦娥(じょうが)6号」を打ち上げた。月の裏側から土壌や岩石などの試料を採取して地球に持ち帰る世界初の試み。「宇宙強国」を掲げる習近平指導部としては、月の探査で他国に先行することで、今後の宇宙開発を有利に進めたい考えだ。月を舞台とした米国などとの競争はさらに激しくなるとみられる。

 嫦娥6号は3日午後5時半(日本時間午後6時半)ごろ、中国南部・海南省の発射場から運搬ロケット「長征5号遥8」に搭載されて打ち上げられた。中国メディアによると、探査機は月の周回軌道に入った後、二つに分離する。片方は月の裏側に着陸して試料を採取し、再上昇。軌道にとどまっていたもう一方の機体が試料を受け取り、地球に帰還する。プロジェクトの期間は53日間という。

 月の裏側は地球から直接の電波が届かないため、3月に打ち上げた衛星「鵲橋(じゃっきょう)2号」を中継して通信を行うという。試料は月面の表層で収集するだけでなく、掘削によっても採取する予定だ。これらの試料を基に月の裏側の地質の特性、月の成り立ちなどを分析する。

 また、月には水資源が存在する可能性や、核融合発電の燃料となる「ヘリウム3」が大量に存在することなどが指摘される。中国としては他国に先駆けて調査を進めることで、将来の資源開発で優位に立ちたいとの思惑もあるとみられる。

 月面探査を巡っては、2023年8月にインドが、24年1月には日本がそれぞれ無人探査機の月面着陸を成功させるなど、近年、競争が激化。一方、有人の探査では米国主導の「アルテミス計画」が先行し、26年以降に有人の月面着陸を目指す。中国も対抗するように30年までの有人月面着陸、35年までの月面研究ステーション建設という計画を明らかにしている。【北京・岡崎英遠】

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