米連邦下院のジョンソン議長=2024年2月27日、秋山信一撮影

 米連邦議会の下院民主党指導部は4月30日、ジョンソン下院議長(共和党)の解任動議に反対する方針を明らかにした。共和党の保守強硬派は、ジョンソン氏がウクライナ支援を含む緊急予算成立のために民主党と協力したことを批判。解任動議の採決を求める構えを見せていたが、ライバルの民主党が異例の議長擁護に回ったことで解任は遠のいた。

 下院の現有議席は共和党217、民主党212。共和党から3人が解任動議に賛同する意向を表明しており、民主党が支持すれば、解任に必要な過半数に達する計算になっていた。

 下院民主党は30日の党会合後の声明で「超党派の連携によって国家安全保障に必要なことを実現できた」と緊急予算成立を歓迎した。共和党を「伝統的共和党」と「MAGA(マガ=トランプ前大統領派)」に区別し、「伝統的共和党とは成果を出すために妥協点を模索するが、MAGAの過激主義は果敢に押し返していく」と強調。トランプ氏に近いグリーン下院議員が3月に出した議長解任動議に反対する方針を示した。

 グリーン氏はX(ツイッター)に「ジョンソン氏は公式に民主党の議長となった。辞任して党派を変更すべきだ」と投稿し、解任動議の採決手続きを進める考えを示唆した。ただ、共和党でも11月の大統領選を控え、混乱を引き起こすグリーン氏に反発する声が大勢を占めている。

 下院では2023年10月、共和党の保守強硬派が当時のマッカーシー議長の解任動議を出し、民主党も支持したために史上初めて下院議長が解任された。今回と同様に、予算協議で民主党との協力に動いたことが解任動議の引き金になった。マッカーシー氏は過去の党派的な言動で民主党に反感を持たれていたが、議長就任まで比較的知名度が低かったジョンソン氏にはそうした拒否感が薄く、緊急予算成立に尽力したことで民主党からも一定の評価を得ていた。【ワシントン秋山信一】

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