米ミシガン州イコースのUSスチールの製鉄所=2024年4月4日、大久保渉撮影

 米鉄鋼大手のUSスチールは12日臨時株主総会を開き、日本製鉄によるUSスチール買収案が賛成多数で承認された。買収手続きが一歩前進した形で、日本製鉄は米当局の審査を経て9月末までの買収完了を目指す。ただ、買収には全米鉄鋼労組(USW)が反対しており、米国の内政事情で当局審査が長引く可能性もあり、日本製鉄の思惑通りに手続きが進むかは不透明だ。

 買収案は、粗鋼生産量で世界4位の日本製鉄が同27位のUSスチールの全株式を141億ドル(約2・1兆円)で買い取り、完全子会社化する内容。市場価格に40%上乗せして買い取る好条件だったため、株主総会に出席したUSスチールの株主の98%が賛成した。

 USスチールのデビッド・ブリット最高経営責任者(CEO)は声明で「株主の圧倒的な支持により、買収には説得力ある理由があることが明らかになった。世界をリードする最高の鉄鋼メーカーとして共に前進していく」と述べた。

 日本製鉄の森高弘副会長も声明で「買収完了に向けた大きな一歩が踏み出され喜ばしい。設備投資の拡大や先進技術の提供を通じ、すべてのステークホルダーのためUSスチールを支える」とコメントした。

 ただ、かつて米製造業を代表する存在だった名門企業を海外企業が買収することに、USWや米議会などから反発が出ている。米当局は安全保障や公正な競争環境の観点から買収計画に問題がないか精査する予定だが、11月の大統領選に向けUSWの意向を尊重せざるを得ないバイデン大統領は買収計画に難色を示しており、当局審査が長引く可能性がある。【ワシントン大久保渉】

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