12月3日に尹錫悦大統領が宣言した『非常戒厳』をめぐって大混乱となった韓国。14日には国会で尹大統領に対する弾劾訴追案が可決されました。韓国で今何が起きているのか...“政治的混乱”が続く現地を取材しました。

約20万人が国会前に集結 止まらぬ「尹大統領を逮捕せよ」というメッセージ

 12月14日、韓国の国会で可決された尹錫悦大統領の弾劾訴追案。国会前には市民ら約20万人が集まり、設置されたモニターで国会の様子を参加者が人気の音楽をかけながら見守っていました。その様子はまるで音楽フェスのようです。集まった人たちに話を聞くと…

 「危険にさらされていた韓国の民主主義を復活させることができてうれしい」
 「めちゃくちゃ幸せです。これまでの政治にも不満があったが、異様な非常戒厳で火がついた」

 弾劾訴追案が可決された後も、その熱は収まることはありません。

 (山中真アナウンサー)「可決から約2時間経っていますが、国会議事堂の前にはまだ大勢の人が集まっています。気温は氷点下1度とかなり冷え込んでいますが、人が帰る気配はないですね。多くの方が集まり、写真を撮っていて、騒然とした雰囲気がまだ残っています。また、集まった人たちからは『尹大統領を逮捕せよ』という声が止まりません」

デモの参加者を支援…“温かいコーヒー”を無料で配布する人も

 さらに、山中アナが周辺を歩いていると…

 (山中アナ)「早速、号外も配られていました。尹大統領弾劾可決という見出しですね」

 無料で配られていたのは号外だけでなく、なんと“温かいコーヒー”まで。

 (山中アナ)「なぜコーヒーを無料で配っているのですか?」
 (男性)「市民のみなさん、特に20代・30代と若い人たちがこの寒い中で(デモに参加して)苦労しているので用意しました」
 (山中アナ)「お金はみなさんが出している?」
 (男性)「もちろんです。韓国人には情というものがあるので。間違ったことを正すためにやっています。みんな同じ気持ちです」

 韓国では様々な形でデモの支援が行われているようで、中には、デモのためにバスまで展示されていました。

 (山中アナ)「バスの中には、デモをしていた人たちのメッセージが書かれた付箋がたくさん貼られています。こちらには『国民をなめるな!早く出ていけ!』ということが書かれていますね。いろんな形でのデモの支援。日本ではなかなか考えられない」

尹大統領の支持者も集会を開催「弾劾は不当なものだと思っている」

 一方、尹大統領の弾劾訴追案可決から一夜明けた15日、韓国のソウル市役所周辺では、“尹大統領の支持者”が数多く集まる集会が行われていました。設置されていた横断幕には『尹大統領を守れ』と書かれていて、さらに…

 (山中アナ)「集会所では新聞が配られていますが、こちらは尹大統領の戒厳は正当だったということが書かれていて、きのうの号外とは正反対の内容です」

 集会の参加者に話を聞きました。

 (参加者)「弾劾は不当なものだと思っているし、尹大統領がやってることは正しいと思う。国民を守るためにも非常戒厳は最善の選択だった」

「お客さんが少なくなった」日本人にもなじみの観光地に影響が

 今回の一連の問題が街にどのような影響を及ぼしているのでしょうか?取材班は、韓国大統領府の近くで、尹大統領が来店したことがあるという海鮮ジャージャー麺が人気の飲食店を訪れました。もともとこの店には尹大統領のサインが飾られていたそうですが、現在はそのサインが外されていました。

 (山中アナ)「なぜサインを飾っていない?」
 (店の関係者)「去年ぐらいからお客さんが(尹大統領のサインを)見て嫌な顔をされたので」
 (山中アナ)「サインをまた飾れる日は来そうですか?」
 (店の関係者)「来ないと思います。この状況ではなかなか難しい」

 さらに、日本人の観光客も多いソウルの観光地にも影響が出ているようです。

 (山中アナ)「ソウル一の観光地・明洞にやってきました。ずらりと屋台が並び、人も賑わっています。ただ、地元の方に話を聞くと、普段は道が見えないぐらい、歩けないぐらい賑わっている場所だということです」

 最近、店舗数を増やしている焼きマシュマロの屋台では、12月3日に非常戒厳が出て以降、影響が続いているといいます。

 (山中アナ)「観光客の数に影響していますか?」
 (店の関係者)「だいぶ影響しています。団体旅行も減っているし、やっぱりお客さんが少なくなりました。客は半分ぐらいは減っている気がします」

 日本人が年末年始で行く国外旅行のうち最も訪れるというのが韓国。別の店の関係者は今後の客足についても不安に感じています。

 (店の関係者)「人がいないじゃないですか。(観光客が)半分以上増えないと。今は半分しかいない」

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