韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が3日夜に出した非常戒厳後の対応で、戒厳軍がいち早く投入されたのが中央選挙管理委員会だったことに、韓国メディアが注目している。指揮した金龍顕(キム・ヨンヒョン)前国防相は韓国メディアに「不正選挙疑惑の捜査の必要性を判断するため」と説明しているが、非常戒厳のシナリオとどうつながるのか。
名簿データの確保狙う
非常戒厳を宣言した緊急談話で尹氏は、「立法独裁」と強い言葉で国会を批判したが、不正選挙疑惑については言及していない。
しかし、緊急談話が終わったわずか3分後の午後10時半過ぎ、近くに待機していた約300人が複数の選管の庁舎に到着した。国会敷地に戒厳軍ヘリが到着したのが午後11時48分、投入されたのは約280人だ。国会より選管の占領のほうが用意周到に準備されていたと言える。
選管が公開した監視カメラの映像を分析したハンギョレ新聞によると、対北朝鮮情報を収集する国軍情報司令部の兵士数人が選挙人名簿を管理するシステムサーバーや配線装置を撮影し、3時間20分後に撤退した。国会の議決で非常戒厳が計画の想定より早く解除されたため時間切れになったが、持ち出した後に組み立て直すつもりで撮影したのではないかと報じている。
世論調査会社も標的
また、国軍防諜(ぼうちょう)司令部が伝えた80人以上の逮捕者リストには、国会議長や与野党代表ら国会議員以外に、野党の世論対策担当者や革新系ユーチューバーの金於俊(キム・オジュン)氏も含まれていた。
金氏は、約180万人が登録するニュース番組チャンネルの進行役で、世論調査会社も運営する。
金氏は6日の放送で、戒厳軍が留守中に放送スタジオに来て、なぜかいきなり「世論調査会社の職員か」と質問したと明かし、「選管の名簿を確保した後、選挙不正疑惑を発表し、国会議員を次々逮捕していくシナリオだったのでは」と分析した。
非常戒厳は、戦争や内乱のような非常事態でのみ宣言できる。陰謀論の証拠集めから始める段階だったとしたら、要件を満たしているとは言えない。
金氏は「今回は国会議決前夜でたまたまソウルに国会議員がいたが、週末に非常戒厳があったら国会封鎖前の1時間余で190人集まるのは難しかった」と話し、一歩間違えばシナリオ通りに進む危険があったと強調した。【堀山明子】
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