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韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による非常戒厳の発令をめぐる捜査が前代未聞の展開を見せています。

警察は、尹大統領を被疑者として本丸の大統領府の家宅捜索に着手。これに先だち、身内である警察のトップ2人を拘束するなど、異例の動きを見せています。

一方、検察も、戒厳令を進言したとされる前国防相を内乱の疑いで逮捕するなど“尹大統領包囲網”が急速に狭まっています。

■大統領府の“家宅捜索”着手

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国家の中枢たる大統領府。そこへ箱を抱えた警察の捜査員たちが続々と入っていきます。戒厳令をめぐる捜査の家宅捜索です。韓国メディアによると、令状に記された被疑者の名前は、尹錫悦大統領本人です。死刑にも処されうる内乱の疑いがかけられています。

ただ、場所が場所だけに一筋縄にはいきません。

連合ニュースTV                                  「私は現在、龍山の大統領府に来ています。(捜査員は)大統領府に出入りするための手続きが遅れていて、2時間以上にわたって会議室で待機している状況です」

捜査員と大統領府の間で資料の押収や捜索方法について合意できず、結局、捜索はできていません。ただ、捜査の手が迫っているのは確かです。

検察は10日夜遅く、戒厳令を進言したとされる前国防相を逮捕しました。同じく内乱の疑いです。逮捕状は大統領を首謀者としています。すでに出頭し拘束されていた前国防相は逮捕直前、自殺を図っていました。

法務省矯正本部長                                「トイレで自殺を図っているところを発見して、すぐに対応した。現在は保護室に収容していて、健康に問題はない」

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■国会封鎖めぐり“警察トップ”拘束

さらに、警察組織にも捜査の手が及んでいます。警察庁長官が身柄を拘束されました。そしてもう1人、ソウル警察庁のトップも同じく拘束されました。

なぜ警察が捜査対象となるのか。非常戒厳が発令された夜、国会を封鎖しようとしたのは軍だけではありませんでした。国会議事堂の外には警察も展開。市民との間でもみあいになっていました。

警察トップの2人にかけられているのは、国会を封鎖し議員らの出入りを阻止した疑いです。現場では野党議員が警官にこんな声を浴びせていました。

野党議員                                    「尹錫悦が守ってくれると思うか?お前ら刑務所行きだぞ」

不正選挙疑惑を理由に選挙管理委員会の庁舎にも展開していた戒厳軍。当時の映像には兵士らを乗せたバスとともに、警察車両が選管の施設にやってくる様子が記録されています。

検察、警察、そして政府高官らの不正を扱う機関が捜査し、包囲網が狭まる尹大統領。国会突入部隊に直接指示を出したとの証言も出ています。

ウ・ウォンシク国会議長                             「証言が事実であれば、大統領が国会の戒厳令解除議決を阻止するため、強圧的に国会の権能行使を不可能にしようとしたことになります。極めて深刻です。今、国会がすべきことは“異常”を“正常”に戻すこと」

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■“弾劾賛成”の与党議員増加

その国会でも追及の圧力は高まっています。先週、与党が採決をボイコットし廃案となった弾劾訴追案。最大野党は12日に再び提出すると決めました。14日に採決する方針です。今度は賛成に回ると表明する与党議員も出始めています。

与党『国民の力』キム・ジェソプ議員                        「党として弾劾に賛成するよう求めます。わが党の問題は自分たちで解決すべきです。『死の道』が『生きる道』です。苦労して渡った『弾劾の川』より、さらに大きく深い『弾劾の海』を渡らないといけないかもしれません。私はわが党の底力を信じています」

与党から8人造反すれば成立する弾劾案。現時点で5人が賛成を表明しています。

与党『国民の力』キム・サンウク議員                          「(Q.今週の弾劾訴追案は成立が難しいですか?)私は成立する可能性が高いとみています。なぜなら大韓民国は国民のものだからです。国民が今声を上げています。8票だけ確保すればいいので、私は可能性があるとみています」

ただ、与党としては、弾劾ではなく大統領退陣で事を収めようとしています。

与党『国民の力』ハン・ドンフン代表                         「“秩序ある早期退陣”によって、大韓民国と国民に及ぼす混乱を最小限に抑えながら、安定的に政局を収拾し、自由民主主義を立て直します」

与党内であがっているのは来年の2月か3月に退陣し、その2カ月後に大統領選を行うという案。しかし、尹大統領がこれに応じるかは不透明です。弾劾訴追を受け入れるとの見方も浮上しています。可決されたとしても、罷免されるかは憲法裁判所の審判次第だからです。

韓国メディアでは、側近がこう発言したと伝えられています。

チョン・ジンソク秘書室長(ハンギョレ新聞)                   「弾劾に行くなら行くまでだ。我々が憲法裁判所で必ず負けるというわけでもないだろう」 この記事の写真を見る
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