夏のビーチを楽しむ人々=イタリア西部サルデーニャ島で2024年8月、ロイター

 イタリア西部サルデーニャ島の過疎に悩む山間部の村が、トランプ次期米大統領の就任に失望した米国人らへの移住を促しているとして話題を呼んでいる。村のウェブサイトにはすでに7万5000件の問い合わせが来ているという。

 「国際政治にはうんざりですか? よりバランスの取れた生活を求めてはいませんか?」「サルデーニャ島の美しい楽園で欧州への逃避行を始めましょう」。サルデーニャの村オッロライは、米大統領選が投開票された11月5日、トップ画面にこう記した特設サイトを新たに開いた。

 政治的分断が深まる米国の住民に移住を呼びかけたとみられるが、「内政干渉」と受け取られかねないことに配慮したのか、毎日新聞のオンライン取材に応じたコルンブ村長は、サイトの開設と米大統領選が重なったのは「単なる偶然だ」と繰り返した。ただ「米国の現在の政治状況を生かそうと思っている」とも話した。

 サイトは米国に住むITエンジニアの弟に200ユーロ(約3万2000円)の低料金で作ってもらったが、米CNNなどで「トランプ氏の再登板に失望した米国人が対象」と取り上げられ、世界中から思わぬ注目を集めることになった。

 村長によると、サイトには12月3日時点で米国などから7万5000件の問い合わせがあった。実際、移住を希望する理由を記す欄には「トランプ次期政権から逃れたい」と記入した人もいた。一方で「現代的な生活に飽き、もっと自然が豊かな所で暮らしたい」といった非政治的な理由を挙げる人もいるという。

 提供する物件は、改修が必要な代わりにわずか1ユーロ(約160円)で販売する空き家や、改修不要で上限10万ユーロ(約1600万円)で住める家などだ。

 イタリアの他の地方自治体と同様に、オッロライは2010年代から「1ユーロハウス」を売り出しているほか、昨年からはリモートワーカーを優遇する招致制度も始めた。

 だが、現在までに1ユーロで家を購入して住んでいるのは4世帯のみ。人口はこの50年間で半減して1200人弱にまで縮小しており、さらなる移住促進は村の将来のために不可欠だ。

 村長は「人口減少を食い止めるのが最終目標。美しく、素晴らしいサルデーニャの魅力を知ってもらいたい。もちろん米国人以外の移住や、一時的な滞在も大歓迎だ」と話し、こうも付け加えた。「トランプ氏だって、もし政治に疲れたら、村に来てリラックスしてもいい。1ユーロで家を買ったっていいと思いますよ」【ブリュッセル岡大介】

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