道路脇に積み上がったプラスチックなどのごみ。プラスチックが海洋など環境中に流出する最大の原因はごみの不適切な管理だという=ジャカルタで2024年11月26日、AP

 プラスチック汚染根絶のための条約策定を目指す政府間交渉委員会は2日、韓国・釜山の会合での合意を断念し、閉幕した。国連環境総会で決議した策定期限は「2024年末」。焦点だった生産規制を巡る対立は交渉を重ねるほど激しくなり、国際社会はこの重要な期限を守ることはできなかった。

 プラスチックの生産・使用量は増加の一途で、プラ汚染防止条約の完成を先送りしている間にも汚染拡大は避けられそうにない。

 環境中に流出してしまうのは、廃棄物が適切に管理されていないことが最大の要因だ。経済協力開発機構(OECD)によると、海洋など環境中に流出するプラごみは年2200万トン(19年時点)に上る。このうち川や湖、海には610万トン流出し、川に1億900万トン、海には3000万トンがたまっていると推計されている。世界のプラ使用量は、40年には20年の7割増の7億3600万トンに達し、環境への流出も増え続けると見込まれる。

 プラごみや微小なプラスチックは人間の生活圏から離れたところにも拡散し、世界で最も深いマリアナ海溝などでも見つかっている。海を回遊するクジラやイルカ、ウミガメ、海鳥などの体内からプラ片が確認されたという報告も後を絶たない。人間の組織からも微小プラが見つかっており、健康への影響も懸念されている。

 今後、政府間交渉委員会で合意を目指す条約には、新たな流出防止策だけでなく、既に環境中に流出・蓄積しているプラスチックの問題についての条文を設けることが想定されている。交渉委のルイス・バジャス議長が1日に公表した条約の草案には、既にプラ汚染の影響を強く受けている区域などを特定し監視していくこと、環境に配慮した方法で回収することなどが盛り込まれた。

 ただし、こうした取り組みは締約国の努力義務とすることが想定されている。またプラ製品に関する規制や廃棄物管理に関する条文と比べると記述も少ない。日本の交渉関係者は「これだけ世界中のあらゆるところに汚染が広がり、交渉でも既存の汚染の根本的な解決は望めないという一種の『諦め』が前提にあった」と打ち明ける。

 それでも、一刻も早く流出を止め、目の前の汚染にも対処していくのが現世代の責任だ。「我々が目指すのは崇高で急を要すること、つまり生態系や人間に対するプラ汚染の深刻な影響を改善することなのだと常に心に留めておいてほしい」。バジャス議長は訴えた。【鈴木理之】

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