シリーズSDGsです。アフリカで野生動物を密猟から守る「レンジャー」という仕事があります。かつては「男性しかできない」と言われたこの仕事を、女性だけで担っている部隊があります。彼女たちが闘える理由とは…
アフリカ大陸南部ジンバブエ共和国。雄大な自然にいだかれ、多くの野生動物が生息する国ですが、その動物たちの命を狙う「密猟」が後を絶ちません。
そうした密猟者と闘い、動物を守るのが「レンジャー」という職業。武装した密猟者や犯罪組織と対峙するため、世界で最も危険な職業の一つとされています。
記者
「ここに催涙スプレー、手錠、これは防弾チョッキ的な役割を果たすもの」
殉職者は年間100人を超えることも。かつては「男性だけの仕事」と言われてきました。
「AKASHINGA」レンジャー ワザナイさん
「周りからは笑われました。『これは男の仕事なんだ、女には無理だ』と」
この国で初めて誕生した女性レンジャー部隊の一員・ワザナイさん(39)。レンジャーになる前、夫からの度重なる暴力に苦しめられてきました。
「AKASHINGA」レンジャー ワザナイさん
「夫は棒で私を叩きつけました、抵抗することはできなかった。周りの多くの女性達には虐待された経験があり、平等には扱ってもらえなかった」
国連の調査では、南部アフリカの一部国々で9割を超える人が「女性への暴力は容認される」などの誤った認識を持っているほか、半数以上が「女性より男性の方が優れた経営者になれる」などと認識していて、性差による偏見=ジェンダーバイアスが今も根強く残っています。
こうした差別や偏見を払拭するために始まったのが、女性レンジャーの育成でした。
集められたのは、ワザナイさんのようなDVや性暴力のサバイバーたち。部隊を発足させたダミアンさんは、過酷な訓練をものともしない女性たちの姿に衝撃を受けたといいます。
「AKASHINGA」設立者 ダミアンさん
「彼女たちにとって、これまでの人生で味わった苦しみや、もとの生活に戻ることに比べたら、命がけの訓練も大したことではありませんでした。女性に足りなかった唯一のもの、それは『機会の平等』でした」
メンバーは現在600人に増え、2017年の発足以来、地域の密猟を80%減らすことに成功したといいます。レンジャーとして自立し、抑圧から解放されたワザナイさん。今は3人の子どもを育てながら、60人の部下を率いています。
「AKASHINGA」レンジャー ワザナイさん
「『女性であってもどんなことだってできる』ということを証明しました。私は本当に大きく変わりました、言葉にできないくらい、大きく」
変化はそれだけではありません。
「AKASHINGA」レンジャー ワザナイさん
「地域の女の子たちは私を見ると『レンジャーだ!』と喜びます。私は彼女たちに『大人になったら一緒に働こうね』と言うんです」
彼女たちの存在が示したもの、それは差別や偏見のない未来への希望でした。
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