バイデン米政権は11日、史上初となる日米比3カ国の首脳会談を開催し、従来の2国間関係に複数の多国間枠組みを重層的に配置することがインド太平洋における中国の台頭を抑える基本戦略だと改めて示した。各国が「格子状」(エマニュエル駐日大使)のネットワークで連携する仕組みを作ることで、各国の政局などに左右されない抑止態勢を整備する狙いがある。
この日の会談でバイデン氏は「(日米比の枠組みが)長く続くことを期待している」と、3カ国の継続的な協力に意欲を示した。
米国は第二次世界大戦後、日本や韓国、フィリピン、オーストラリアなどと個別に同盟関係を結ぶことをアジア太平洋での安全保障体制の基調としてきた。日本が連合国各国と平和条約を結んだ1951年に前後して構築されたことから条約締結地にちなみ「サンフランシスコ・システム」、あるいは米国を結節点とした「ハブ・アンド・スポーク」体制と呼ばれる。
集団防衛のための北大西洋条約機構(NATO)と対照的な構造となったのは、各国利害や歴史的、文化的差異が大きいためだ。
しかし、中国の台頭を受けて安保体制のアップデートは焦眉の急となった。その中でバイデン政権が推し進めるのは日米豪印の「クアッド」や米英豪による「AUKUS(オーカス)」といった多国間枠組みを多層的に組み合わせる戦略だ。昨年8月に大統領山荘キャンプ・デービッドで首脳会談が行われた日米韓や、今回の日米比の枠組みもその延長線上にある。
2国間と多国間関係の重層化は、安保態勢の安定化にも寄与すると期待される。中国は選挙干渉を含む工作で各国・地域への影響力拡大を図っている。米国でも孤立主義的な政策を掲げるトランプ前大統領が返り咲く可能性がある。そんな中、複数の枠組みで関係を構築することは、政権交代などで各国が安保政策を激変させる歯止めにもなり得るためだ。
これらの取り組みは、台湾や東・南シナ海を巡る中国の現状変更の試みを抑止すると同時に、国際秩序全体の維持をも目的とする。バイデン政権の対中政策をつかさどるキャンベル国務副長官は3日、自身も関与したオバマ政権のアジア戦略「リバランス(再均衡)」について、「欧州離れと受け止められた」のが反省点だと語った。このためバイデン政権は、中露など現状変更勢力の封じ込めに向け、インド太平洋と欧州を結びつけることを展望している。(ワシントン 大内清)
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