フィリピンで大統領を務めたドゥテルテ家とマルコス家の亀裂が深まっていて、現職のマルコス大統領に対する“暗殺計画”も飛び出しました。一体、何が起きているのでしょうか。

記者
「こちらはフィリピンの地元紙ですが、“大統領殺害の脅威を受け警備を強化”と報じられています。きっかけは、ドゥテルテ前大統領の長女で、現政権の副大統領を務めるサラ氏の爆弾発言でした」

問題の発言はおととい、サラ・ドゥテルテ副大統領が行ったオンライン会見で飛び出しました。

サラ・ドゥテルテ副大統領
「ある人に『私が殺されたらマルコス大統領、ルイーズ夫人、 ロムアルデス下院議長を殺してくれ』と指示した。これは冗談ではない。最後までやり抜けと命じた」

マルコス大統領夫妻らに対し「殺し屋を雇った」として、“暗殺計画”を口にしたのです。マルコス氏をあからさまに敵視したサラ氏の“暴言”は先月にも。

サラ・ドゥテルテ副大統領
「彼の首を切り落としたい。私とマルコス大統領との関係が有害であることに気づいた」

度重なるサラ氏の過激な言動は、物議を醸しています。

マニラ市民
「副大統領があんなに汚い言葉を口にするとは思いもしなかったので見苦しい」
「民主主義なのだから、心の中にあるものを表現することに問題はない」

かつて独裁体制を敷いたマルコス元大統領の長男、フェルディナンド・マルコス氏。おととし出馬した大統領選挙では、副大統領候補のサラ・ドゥテルテ氏とタッグを組み、勝利しました。

サラ氏の父であるドゥテルテ前大統領は、在任中、当時のアメリカ大統領に「地獄へ落ちろ」などと過激な発言を繰り返したほか、違法薬物の取り締まりのため、容疑者を容赦なく殺害する「麻薬戦争」を推し進めました。大物政治家の2世同士が蜜月ぶりを演出していたはずが、なぜ、亀裂が広がっているのでしょうか。

要因のひとつとされるのが外交政策の変化です。当初は、中国寄りとされたドゥテルテ前政権の継承を掲げていたマルコス氏ですが。

マルコス大統領(今年7月)
「我々は(領土問題で)譲歩できない。我々は揺らぐことはできない」

就任後は中国と対立する南シナ海の領有権問題を背景に、アメリカとの関係強化に舵を切りました。さらに、マルコス氏が大統領職などの任期延長も視野に憲法改正の動きを進めていることで、次の政権を見据えたドゥテルテ家との主導権争いが激化。

ドゥテルテ氏や長女のサラ氏が公然と“マルコス批判”を繰り返す一方、マルコス政権はドゥテルテ前大統領の「麻薬戦争」をめぐり、ICC=国際刑事裁判所の捜査に協力する姿勢を示すなど、両者の対立は一段と深まっています。

マニラ市民
「国民の半分近くはドゥテルテ氏を支持しているので、このままだと国が分裂してしまう」

サラ氏の「殺し屋」発言を受け、マルコス大統領はきょう、「犯罪行為を見逃してはならない」と述べたうえで「反撃する」と明言。両家の争いはさらに激しくなるおそれがあります。

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