ドイツのショルツ首相がウクライナ支援を巡り、国内外で批判されている。ロシアのプーチン大統領と電話協議したことで、ロシアを孤立させようと結束してきた欧州の国からは困惑の声が上がる。国内では、長射程ミサイルの供与に対する消極的な姿勢が議論の的となっている。
ショルツ氏とプーチン氏は15日、60分間にわたり電話協議した。ドイツ政府の発表によると、ショルツ氏はウクライナからのロシア軍の撤退などを要求し、ウクライナを支援するドイツの姿勢を改めて伝えた。
ウクライナに連帯する欧州諸国はプーチン氏との対話から距離を置いている。西側諸国がロシアに歩み寄り始めたとのプロパガンダに利用されかねないためだ。このためウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアの孤立を軽減させる」としてショルツ氏を非難。リトアニアのランズベルギス外相は「理解しがたい」と苦言を呈し、フィンランドのバルトネン外相も、プーチン氏との電話を控えるよう欧州の国々に呼びかけるなど、欧州各国にも波紋を広げた。
電話協議はなぜ計画されたのか。ショルツ氏は17日、「米露の大統領が会談するのに欧州の主要国の首脳が対話しないことは良くない」と述べた。トランプ次期米大統領は1月の就任前にウクライナ侵攻を終わらせると主張しており、ショルツ氏にはウクライナに不利な形で交渉を進めないようプーチン氏にくぎをさす意図があったとみられる。
だが会話は平行線に終わり、ピストリウス国防相も「願ったほど効果的ではなかった」と認めた。独紙「南ドイツ新聞」は欧州諸国のショルツ氏への信頼は「かなり崩れた」と指摘した。
国内ではショルツ氏は、ウクライナが以前から供与を要請している射程500キロの長距離巡航ミサイル「タウルス」の供与に消極的なことが問題視される。バイデン米政権は今月、米国製の地対地ミサイルATACMS(エイタクムス)をロシア領に向けて使用することを容認した。しかし紛争のエスカレートを懸念するショルツ氏は18日、タウルスを供与しない方針を改めて表明。野党だけでなく与党・緑の党からも供与すべきだとの声が出ており、ショルツ氏への圧力は高まっている。
ドイツでは今月、予算案を巡る対立から連立政権が崩壊し、来年2月に前倒しの総選挙を控える。政権の支持率が低下する中、最大野党の統一会派・キリスト教民主・社会同盟はタウルス供与を含む積極的なウクライナ支援を掲げており、争点となりそうだ。【ベルリン五十嵐朋子】
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