石破茂首相は18日(日本時間同日)にブラジル・リオデジャネイロで開幕した主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に初めて臨んだ。初日の討議では、開発支援や気候変動対策、国連改革などを議論し、首相は分断ではなく協調を呼びかけ、G20で課題解決を主導していく必要性を訴えた。
18日(同18~19日)は「飢餓と貧困との闘い」と「グローバルガバナンス機構改革」の二つの討議があり、首相はそれぞれ発言した。
「飢餓と貧困との闘い」では、政府開発援助(ODA)を通じて長年実施してきたブラジル中西部の農業支援事業「セラード開発」によって世界最大の大豆生産地となった事例などを紹介。日本が過去5年間で約150億ドル(2兆3000億円)の飢餓・貧困対策を実施してきたことを強調しつつ、さらなる農林水産業支援を中南米やアフリカに広げていくとの方針を表明した。
また、気候変動問題を巡っては「世界の気温を産業革命前から1・5度上昇に抑える」という世界共通目標と整合する「野心的」な次の温室効果ガス排出削減目標を策定し、実行するとの意欲を示した。日本は「2030年度までに13年度比46%減」の現行目標を更新し、35年以降の新たな目標を来年2月までに国連に提出する予定で、さらなる上積みが求められている。ただ首相は「各国の事情に応じた多様な道筋」の下での目標達成を目指す立場で、石炭火力発電への依存度の高い日本の事情への配慮も求めた。
首相が公約に掲げていた防災庁設置にも言及した。防災対策の強化や避難所の環境改善などで各国と知見の共有を呼びかけた。
「グローバルガバナンス」の討議では、首相は国連安全保障理事会を「現下の諸課題に対処できていない」と厳しく指摘し、常任・非常任理事国双方の拡大など、具体的議論を早急に進めるよう訴えた。
ロシアによるウクライナ侵攻は「法の支配に基づく国際秩序に対する明確な挑戦」と位置づけ、北朝鮮との軍事協力の進展に「深刻な懸念」を表明した。パレスチナ自治区ガザ地区をはじめとする中東情勢を巡っては、「危機的な人道状況への強い懸念」と全ての当事者への「最大限の自制」を求めた。
世界貿易機関(WTO)の改革については、紛争解決機能の回復は「急務」と指摘し、「政治的推進力」を与えるよう各国に協力を呼びかけた。【リオデジャネイロ村尾哲】
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